ロジスティクスには、まちづくりも含まれます 
国内でもっとも貨物輸送量が多いのはトラック輸送だ。そのトラックが通行する道路は基本的に行政が整備し、運送業者自身が整備することはまず無い。道路整備には自動車税や通行料が充てられているが、それはあくまで資金の話。道路を整備する側と、それを利用する側は別の組織として動く。これは道路に限った話ではなく、鉄道や港湾、空港なども同様の場合が多い。行政は一定の計画に沿ってインフラを整備し公共に供するオーナー兼プロバイダー、運送業者はそれを利用するユーザーという図式だ。
貨物ターミナルやコンテナふ頭などはともかく、物流インフラの多くは人の移動手段としての役割を兼ねている。道路や鉄道路線などはその代表格で、どう路線を敷くかは都市開発にも影響してくる。運輸と旅客の線引きが今よりも曖昧だった明治以前の日本では、街道をどう結ぶか、運河をどう引くか、どこに港を整備するかといった計画がそのまま生活と密接に関わっていた。
端的に言えば、物流インフラの整備とまちづくりは直結しているのだ。にもかかわらず、物流業者が主導権を持って「まちづくり」に参画できているかといえば、答えは否である。今日、ユーザー自らが現実的に整備できるインフラといえば、倉庫のみといっていい。
史上最大の作戦と呼ばれるノルマンディ上陸作戦では、連合軍は200万トンともいわれる物量輸送に備えてあらゆるインフラ整備を実施した。その集積地となったイギリス南部に300kmちかい線路を敷き、160以上の飛行場をつくり、無数の道路を整備したのである。さらに上陸地にはユニット化されたケーソンを運び、大々的な港湾施設の整備も行っている。
まちづくりとは少し観点が異なるかもしれない。しかし当時整備された線路や飛行場は一部が戦後も利用され、その後のまちづくりにも少なくない影響を与えたという。
これから建てる倉庫だって、まちの一部になるのだ。
久保純一 2019.7.5