コンビニ時短で出店戦略が変わる? 
コンビニエンスストアの時間短縮営業がはじまろうとしている。その主な原因は、人手不足によるフランチャイズ店舗オーナーの疲弊や収益悪化など。「ほとんど客の来ない深夜に、高い時給で従業員を雇ってまで店を開ける理由がない」。以前から挙がっていたフランチャイズ店舗オーナーの声を本部が汲み上げ、営業戦略などを理由に拒んでいた時間短縮営業を容認したかたちだ。24時間営業を前提としたコンビニの収益モデルは、変化を迫られている。
付随する業務もまた、大きく変わらざるを得ない。なかでも取り沙汰されているのが、物流の再構築だ。コンビニは基本的に店舗に在庫を持たず、トラックによる多頻度配送で運ばれてきた商品をそのまま店頭に陳列していく。POSデータをもとに発注された商品情報は本部で一括管理され、物流センターや工場に送信。弁当やパンなどの生産調整も時間ごとに行われる。一般的なコンビニでは1日に6~9回程度の商品配送があるというから、搬入作業を目にしたことのない人はいないだろう。食品類が入った通い箱を台車で店に運び入れる姿は、もはやコンビニの日常光景のひとつだ。24時間営業はこの多頻度配送によって成り立っているといってよく、その収益力は物流コストとの戦いが左右しているといっていいだろう。
物流の力が寄与するところが大きいコンビニの24時間営業。営業時間を短縮して配達頻度が減ればそのぶん物流コストが浮くという見方もあるが、配送ルートや積載率が変わって物流効率が悪化すれば、結果としてコスト増をまねきかねない。しかしコンビニ各社はおおむね楽観的で、例えばセブン‐イレブンでは低頻度配送を実現した沖縄県での店舗運営手法をベンチマークとして、配達頻度の見直しなど物流の仕組みの再構築を検討しているという。
出店計画も、物流が大きなカギを握っている。同一エリアに大量出店するドミナント戦略は配送先の集約化を図ったものということができるし、既存店舗との距離が離れ過ぎているエリアに出店しないのは集客力よりも物流効率化が理由だともいう。時短営業の普及によって物流の仕組みが変わり、こうした出店戦略が見直されることになれば、コンビニが求める立地にも変化が起きるということもあり得なくはない。収益構造と物流システムが許せば、これまで見向きもされなかった場所にコンビニができるかもしれない。もちろん、逆もまたあり得るのだが。
久保純一 2019.11.20