延 嘉隆の物流砲弾<12>物流業界の“弊害”は“コンサル”だ! 
過去の連載で、物流子会社、3PL、ソリューションベンダーについて綴ってきたが、筆者が最も、物流業界における“弊害”と考えているのが“コンサル”だ。そして、10年前、筆者が物流業界に関わるようになった際、最も違和感を抱いたのが、“コンサル”と称する人の多さだった。どこの業界にも“コンサル”なる生き物は存在するが、猫も杓子も“コンサル”と称する業界も珍しいな・・・と思った。
同時に、「コンサルが嫌い」、「コンサルは信用ならない」、「コンサルが掻き回している」、「コンサルに騙された」など、ネガティブな印象を持つ人も多い(寧ろ、物流業界では多数派なのではないかとさえ感じる)。
それにも関わらず、日々、物流業界では、“コンサル”と称する人たちのメッセージが踊る。そのいずれも、“部分的”にはなるほどな・・・と同意することも多いものの、“こういう視点が無いよね♪”と近視眼的なものが多かったり、何より、戦いの最前線で斬り合ってる“リアリティ”や“迫力”が無いと感じてしまう。それが、あたかも“正義”であるかのごとく、然して、疑われることなく、何となく正しい解決法のごとくなっていることに違和感を覚える。
今回は、自身の痛切な反省の意味も込め、物流業界における“コンサル”について、率直に、思うところを述べてみたい。一々、反論・補足説明するのも面倒くさいので、「自分は良くて他は悪い」という主旨で述べていないこと、更には、本文に批判的な言及があるとしたら、それは、自らへの“戒め”であると受けとめて頂ければ幸いである。また、本文では、世間一般における“コンサル”という広義なことではなく、あくまで、物流業界における“コンサル”について言及している点、お含みおき頂きたい。
*本稿では、「物流業界におけるコンサル」という意味で、「物流コンサル」と表記します
そもそも、“コンサルティング”とはなんぞや?
まさに、この疑問こそが、物流業界において、良くも悪くも、“コンサル”という存在が跋扈している理由かもしれない。物流関連のメルマガなどを購読しると、毎日、目にする“コンサル”という言葉。その指し示すところが、イマイチ、解らない。
“物流コンサル”を論じる前に、そもそも“コンサルティング”とは・・・などという固いことを書く気は毛頭無いので、関心がある人はチェック(↓)
雑にいえば、「まぁ~、“コンサル”の捉え方は色々あるよね♪」といったところだ。そして、“物流コンサル”・・・と言っても同様に、色々な機能性や役割がある。本来、何かしらの物事を語る上で、言葉の定義が無いと議論が始まらないが、土台ムリ!というのが実態。つまり、高尚な戦略系コンサル出身者からブローカー(あるいは、それ以下の魑魅魍魎)まで様々な人がコンサルと称している実態は、あながち、間違っているとも言えないのだ。
まぁ~、物流業界において、日々、“コンサル”という言葉を目の当たりにしながら疑問に思うことは多々あれど、お金を払う人と貰う人がいて“商い”が成立しているので、「なんでもいいんじゃないか・・・」というのが筆者の考えだ。取引先から良いと思われれば“商い”は続くし、思われなければ終わる。そう考えるのが自然なように思う。但し、“コンサル”と称する場合でも、「こういったことは自主規制しようよ♪」と思うところは幾つかある。この点は後述したい。
“物流コンサル”は何で飯を食べているのか?
“物流コンサル”の飯のタネは、概ね、以下のような形態に分けられる。コンサルのなりわいの実態(どのような属性の会社から、どのような主旨の報酬を得ているのか)に着目してみたい。
“物流コンサル”の取引属性は、大きく3つしかない。一つは物流会社、次に荷主企業、そして、それ以外(ソリューションベンダーなどの物流領域をターゲットにした第三者)だ。その取引先属性(物流企業or荷主企業orそれ以外)、及び、報酬の継続期間や金額感などで区切れば、だいたい、このようなパターンに類別される。
1)中堅中小物流会社、及び、荷主企業からの月額会費報酬
2)中堅中小物流会社、及び、荷主企業からの月額顧問報酬
3)企業規模を問わず、物流企業からのプロジェクト型報酬
4)企業規模を問わず、荷主企業からのプロジェクト型報酬
5)自社又は他社の講演業・著述業(執筆業)が主たる報酬
6)もっぱら、物流周辺事業者の顧問料、または、営業紹介報酬
おそらく、“物流コンサル”の存在が解りづらい、文章などを読んでいて?と感じるのは、実は、バトルフィールドに立っていない「5」の実質的な評論家の類が多いこと、更には、
「6」が主たる稼ぎの人が多いことにあるのではないか?と個人的には思っている。
感覚的な話で申し訳ないが、業界内で著名な方、あるいは、著述が多い方とお会いした時、戦場の臨場感や緊張感を醸し出していない人は多い。
もっとも、物流コンサルの側に立てば、継続的な情報発信をもとに、勉強会形式の月額会員報酬が最も安定する“シノギ”なのは紛れもない事実である。そのような状況になり易い合理的理由はあるし、そのような会は、概ね活況を極めているので、“商い”として、そのニーズは顕在しているのも事実だ。
ただ、筆者が一点思うのは、何かしらの有意義な情報を、その情報に価値を見出す人たちに伝えることは良しとしても、冷静に考えれば、通常、“コンサル”という職種は、取引企業との秘密保持契約でがんじがらめにされるものなので、先端企業や先進事例などを声高に説いている人ほど、(当該情報元企業の許諾を得ていれば別だが)「リアルに関わっていない」ということは明確に言える。
実際、筆者が関わったことがある企業の事案などを解説する同業他社の話を聞いたことあるが、「確かに、それはそうなんだけど、ポイントはそこでは無いんだよね・・・」と思うことがある。まぁ~、言いたいことは、ビジネスに限らず、「全ての情報を手放しに鵜呑みにしないようにね♪」みたいなこと。
次に、筆者がもっとも指摘したい「6」と思ったが、文字数が長くなったので次号(11月20日)に廻したい。
●延嘉隆氏プロフィール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
株式会社ロジラテジー代表取締役。
物流企業経営の視点で、財務戦略(事業承継・M&A・企業再生)・マーケティング戦略を融合し、物流企業の価値を上げる物流コンサルティングファームとして評価が高い。
物流企業を中心に、事業承継・相続、物流子会社の売却など、“ロジスティクス”、“卸”、“小売”などの財務課題で、卓越した経験を有する一方で、物流現場に作業員として入り、作業スタッフとの対話に勤しむ一面も。延氏の詳しいプロフィールはコチラ。