物流と科学 − 74 
科学と物流を結びつけて取材をしてみたいと思っていたことがあった。
iPS細胞の山中伸弥京都大学教授がノーベル生理・医学賞を受賞したニュースを見て、思い出した。
ヒトはもともと一つの細胞。それが分裂していき、成体であれば60兆個の細胞に膨れ上がる。口から摂取された食物と水、それと酸素は、多段階の化学反応を経て、ヒトとして生きていくために必要なエネルギーなどに変わる。学生時代に、その反応メカニズムを図表にしたものを教科書で見たが、非常に高度で精緻だ。
化学反応は様々な細胞で行われる。一つの物質が別の細胞に運ばれ、また別の物質へと変化していく。その中にはエネルギーの流れや酸素の流れ、脳から各器官へと流れる信号などがある。そこにはスムーズな物流がなくてはうまくいかない。
例えば、脂肪はエネルギーの在庫であり、血管は高速道路といった表現ができるだろう。ヒトの仕組みを知れば知るほど、そこには現代社会の効率化のヒントがあるように思われる。
また、宇宙と物流も結びつけておきたかった。宇宙に行くロケットやスペースシャトル(既に引退したが)には、非常に厳しい重量制限や容積制限がある。そこには、物流のノウハウがなくてはならないはずだ。
今回のノーベル賞受賞のニュースで、記者時代のことを少し思い出した。