フジサンケイビジネスアイ(8)大廃業時代は物流不動産ビジネスのチャンス 
イーソーコグループ 会長 大谷 巌一
経済産業省が2017年10月に分析した資料によると、今後10年の間に70歳(平均引退年齢)を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万(日本企業全体の約3割)は後継者が未定となっている。このままでは中小企業廃業の急増により、25年ごろまでの累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性があるという。半面、「大廃業時代」の到来は、物流不動産ビジネスにとってチャンスといえる。企業の新陳代謝が進み、共同出資会社設立やM&A(企業の合併・買収)による規模拡大が可能となるからだ。
当社では老舗の秋元運輸倉庫(東京都港区海岸)と共同出資会社「イーカーゴ」を設立するなど、強者に立ち向かう差別化戦略である「ランチェスター戦略」を展開している。物流不動産ビジネスと高いシナジーを見いだせる会社を見極めてM&Aも進める方針で、新たな販売チャネルやノウハウの獲得を目指す。
M&Aの対象は、取引先の潜在的なニーズを引き出せることが第一。事業内容、営業エリア、ドライバー数、車両・倉庫内設備等の状況を踏まえ、シナジー効果を発揮できるか、安定的に成長できるかを判断する。また、物流施設等の固定資産の大きさにより、有効利用を検討しながら収益性の高い建築物への増改築を行う。
共同出資会社や買収した企業とは、クラウドコンピューティングシステム「イーソーコライブ」で情報の共有化を図る。実行部隊の物流ユーティリティープレイヤーと情報を共有化することで、確度の高い効率的な営業活動が可能となった。
多くの物流会社の経営課題は、財務状況の改善とドライバー確保の2つ。荷主への交渉力が弱い中小物流会社を尻目に、国内大手や準大手はアマゾンをはじめとするグローバル企業に対抗するため業務提携を活発化させている。物流施設やトラックの共同化で合理化を図り、荷主への交渉力を高めている。中小企業は存在価値が先細りする中で、事業承継人材の確保が難しく、親族間での継承も減少を続ける。物流業者間では新たなソリューションも生まれにくい。
しかし、物流はあらゆる産業を下支えするインフラ機能を持ち、他業種との提携によって付加価値を創造するニーズが生まれる。とくに物流不動産ビジネスは、物流業に対し不動産、金融、建築、IT等の異業種を横断的に業態化するブルーオーシャン(新規開拓市場)のマーケットとなりえる。政府も事業承継支援はもちろん、後継者が先代から事業を引き継いだ際に業態転換や新事業・新分野に進出する「第2創業」支援などの対策に取り出した。物流業界の職場を3K(暗い、汚い、危険)から新3K(カッコいい、稼げる、感動する)へ。物流改革を実現する時期がやってきた。