世界は日本に何を期待しているか − 第2回 国家戦略会議と物流
モノ作り大国日本がなければ、世界の自動車や科学技術に進歩はない。実際にもミサイルやスペースシャトル、エンジン制御のICなどは、その多くの部品や素材の製造を日本が担ってきた。重厚長大産業から軽薄短小製品へのシフトは成功していたのに、「雛(ひな)」という小さなこだわりの粋を生かした江戸指物職人技が、iPADに先行された。手触り、反応、心地よさは江戸小物の代表精神だったのに。
売値500$の内に日本の技術と製品は60$しかない、組み立てと物流はアジアにまかされているが、それでも原価は180$という構造。粗利320$は全部アップルが握っている。
製造技術より感性デザインが勝っているのだ。これからどうする?まだ、モノ作りと工場の内部に改善を追求してゆくことが大事なのだろうか。
「理屈の上では、この円高では国内で生産はできない」トヨタ社長の発言は重い。
円高をメリットにした産業がもっと台頭して、雇用や税収に貢献できれば良いのだが、そちらの応援歌は聞こえてこない。こっそり、為替差益を溜め込んでいるのだろう。
Pray for Japan を忘れてはならない。世界は本当に日本があの震災で沈没したと信じていたのだ。外地にあっては、東京も東北も違いはない。津波が首都を襲っていたと信じていたのだ。米軍空母による緊急支援もトモダチ作戦には驚いただろう。沈んだ空港を一夜にして復活させた、技術とパワーを忘れてはならない。SPEEDI(緊急時迅速放射能影響予測システム)の風向情報は当てにならなかったが、フィンランドやドイツの気象庁は完全に把握していた。フランス政府は真っ先に在留職員を避難させた。説明に嘘が多すぎる、混乱の最中なら許されても、この期に及んだ原発事故報告や汚染情報の隠蔽は許されない。
日本は再生しようとするなら、事実を正直に解説してゆく努力が必要なのに、外交はそれをできないでいる。マスコミは怪しげな憶測記事しか書いていない。世界の期待に応えていない。
このままでは数年前からのクールジャパンブームに水を差す、嘘つき、隠蔽、ごまかし、不正、責任逃れの国民性を認めたことになってしまう。ナデシコジャパンの勝利や体操選手の活躍、メジャーリーグのイチローだって後ろ暗くなってしまう。誠実を取り戻そうではないか。誠実こそ最高の戦略であり、優れた志は世界から評価を受けられる。
昨年の教訓で身につまされた、「明日は約束されてはいない、だからこそ今日を誠実に生きよう、人々の間に尊敬と尊重を忘れないように生きていこう」
経営や物流、業務や営業においての誠実は何か、これからの成長は量から質へ、総額よりも率へ、一人当たりの付加価値の増大に欠かせない要素とは何か。それを考え抜くことが、生活と人生の幸福につながるはずだ。新しい幸福指標が生まれようとしている、モノの消費はなくならないが、所有と利用ははっきりと分離してゆくだろう。
脱製造、脱流通、これからはサービス産業が主流にならざるを得ない。サービス物流が今年のテーマなのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)