広がる輪 - 第17回 物流不動産Bizの人材開発
もし事業の経営者が真剣に「社会に貢献したい」という活動理念と事業展開を続けているのなら、その志は多くの企業や組織で共通なはずだ。シゴトは経営者の<志事>として、様々な商品やサービスも競争ではなく協調の成果として社会に広まるだろう。
その時、起点は経営者ではなく、それは組織の一員、マネージャー、若い従業員の手によって行われる活動のはずだ。
高めるための競争は歓迎すべきものだが、<勝つための競争>は自分より下を叩くことが戦略的には優位に働き、相手の弱点にフォーカスしている。尊い競争は高めること、磨くことであり、その日を凌ぐことではない。しかし、その違いを明らかに日々の運営を目指す企業や組織は極めて稀であり、同様に働く人々も目的を見失いがちである。志を高めるのではなく、日々の成果のために競争を考えるなら、それは自社よりも下位にある企業や人財を狙い、叩き、否定することがたやすい。「〜より安い、優れている、便利、自由度がある」などと、比較差別だけを手がけることになる。これはこれで小手先の技術や戦法が必要なので、組織も人財も学習を続けている。
<企業の利潤追求>は企業や組織の目的に即した手段であり、それが日々の計測や成果の進捗であるなら、人は疲労と失望の毎日を送り続けることになる。どの様に言いくるめても、人をカネで釣ることはできない。組織もカネを目的とするなら、競争に明け暮れる消耗の運営になってしまう。
売上や利潤という手段指標を測るなら、それは活動の結果であり、信頼性や保証の結果ではない。先行指標を定めなければ、「結果に一喜一憂するだけである」。良い成果をもたらすための先行指標、利益は売上が先行し、顧客満足は顧客数が先行する。優れた競争は従業員の動機づけが必要であり、志の高さは日々の行動が成果となる。このような先行指標を追求することが、人と組織の成長になる。
人が一人では生きられないように、企業や組織もサプライチェーンの営みの中でしか存在できない。強い営業力を自負しても、常に競争しているだけではなく、戻るべき母校や癒やしてくれるドックが背景にはあるものだ。
パートナーに支えられ、頼りにされ、贔屓にされてこそ組織の存続が可能になる。それは、「守りたい人、守りたい企業組織」と認められているからであり、競争の真実は寛容と保護なのだ。
ライバルを認めるのは連戦連勝の相手ではなく、時に戦い方を学び、次の挑戦に期待する<戦うべき相手>という尊重がなくてはならない。そこに共通の価値観と社会での存在意義が見いだせる。
つまり、通じるものがあり、競争の格調が維持されるのは<戦うにふさわしい相手>だからだ。
言うなれば、育った人財に共通するものがあるから、競争を挑み続けることができるのだ。
そうしてこの価値観は社会に受け入れられ、組織の継続と安定が認められることになるのだ。競争は協調であり、調和とバランスが人も企業も求めるものでなければならないのだ。
見事な人財を育成した企業や組織は、見事な競争相手に尊重され、互いに高め合うライバルとして社会の中でつながりが始まり、その輪が広がるものなのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵