人材の多様化 - 第8回 物流不動産Bizの人材開発
マネージャーという立場に立つことを想像してほしい。メンバーや仲間には様々な人たちがいるはずだ。年齢や性別、場合によっては国籍さえ異なる人たちがいる。そんな中でマネージャーはリーダーであり、世話役でもある。主な仕事はメンバーの仕事をリードし、見守り、心配して最悪の事態が起きないように気配り、心配りを心がけて、いざとなったら率先してフォローする。ヒーローでもあり、スーパーマンでもあるが、それは結果のことである。そうであれば良いな、と願うだけだ。
どんな会社も人があふれることはなく、どんな仕事もギリギリの体制でこなさねばならない。人手不足というより、日本人はドル換算すると世界一人件費が高いということになっている、らしい。円安のせいかもしれないが、企業の稼ぐ力不足のせいなのか、人件費率は極めて厳しい状況にある。賃金はなかなか上がって行かないが、それでもサービス業を見る限り、フードサービスやホテルなどではアジアと並ぶ「安い時代」にはなってきている。
経営面から賃金や労働力として人材を眺めると、それは貴重な資源を任されていることになるのだ。「より少ない人員で最高のパフーマンス」を出さねばならない。同級生や同世代の仲間なら、その感覚は話さなくても伝わるが、10歳以上も離れた年上のシニアや家庭の主婦上がりのパートタイマーさんには、どれほど言葉を尽くしても理解してもらうことは難しいだろう。
ジェネレーションギャップ、ジェンダーギャップを痛いほど感じるのが、マネージャーになった君なのだ。
経営理念をやさしく解説するのか、仕事の手続きやプロセスと前後関係を把握させるのか、生産性や時間の大切さ、仲間同士のコミュニケーションなのか。実はそんなことはどうでも良いのだ。
多様化する人材や人々は様々な価値観と常識感で仕事をする。指示命令に素直な人もいれば、理屈をこねて反論する人も出てくるだろう。声を荒げても効果はないし、言いくるめて懐柔しようとしても若い君にはすぐ下心がばれてしまう。
どのような現場でも求められているのは、<効率と進化>なのだ。昨日より今日、先月より今月、去年より今年、実績や効果が変わっていなければ進化しているとは言えない。全てが生産性のように数字で示されないかもしれないが、仕事や作業の結果はお客様への影響につながる。
より喜ばれた、便利になった、売上が上がった、ミスが減った、クレームがなくなった。効率とはこんな視点でお客様から見てどうなんだ、ということだ。
仕事に真善美の尺度があれば問題点を発見できる。どんな人も効率と進化の尺度で、昨日よりもどうなっているのかを常に働きかけることなのだ。5時で仕事が終わるなら、昨日よりも早くなっているのか、余裕が出ているのか。月の業績が出ているなら、伸びているか、残業時間が減っているか、使用する材料はどうだったのか。パソコンの操作時間は減っているか、タイプミスはどうなっているか。時間と量の感覚を全員が持たねば効率も進化もわからない。
多様化する人材であっても、共通の尺度や言語、価値観が効率と進化なのだ。スタートや基準は人によって異なるが、それでも伸びることが良いのだ。そのことだけをひたすら伝えなくてはならないのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵