怒りと叱責scold-第22回  物流不動産Bizの人材開発
命令と管理は組織を統制、維持する原則だ。経営の安定と再現性のためには命令違反を罰して、規則の威厳を保つ必要がある。命令は正当化されるか、という問に答えるには<ルールだから、守るべきだ>ではトートロジーに過ぎない。ルールの意味とその目的に即して違反を罰せねばならない。しかしルールは環境変化によって変わるべきだし、その都度に新たなルールが準備されなくてはならない。
ルールを無視するなら叱り、糺すための叱責は必要だ。人は喜怒哀楽という心情を元に行動するからであり、論理が心情に先行することはない。もし、すべてが論理ならそこには人間関係の対話は存在する必要がない。
会社や家庭で叱り方、怒り方を間違えることが増えてきている。キレるとは、論理の破綻ではなく感情や心情の破壊である。組織の内部で起きればハラスメントとなり、双方に悲劇が生まれる。怒りの理由や叱る意味を伝える対話が欠かせない。
人材の多様化が言われる今、私たちの価値観や常識も変わってきている。長幼の序を尊ぶことは、教育の成果であり、家長主義の名残なのだ。先輩を敬い、言いつけを教訓として守ろうとする心情もまた、教育の成果と広くある常識と呼ばれるものにすぎない。
●なぜ、年上は敬うべきなのか
●なぜ、あなたの命令や指示が正しいのか
●なぜ、古いルールに固執するのか
命令と管理による組織運営だけでは多様化する社会の価値観には対応できない。新旧価値観の違いが常識はずれという錯覚となり、怒りにつながる。叱らなくてはならないと思いこむことになる。
怒りの理由には、冷静な対話が抜け落ちていたことを自覚しなくてはならない。
●解説や説明が足りなかった
●合理的な判断によるルール作りができていなかった
●期待に沿わない状況を深く憂いている
●このままでは軌道を外れ、失敗につながる危険を察知した
このような怒りの原因を知った時、効果的な対話の方法を覚えることで正しい叱り方が生まれる。
効果的な是正や更生の方法を身につけることが、人材育成や組織維持の秘訣になるだろう。
叱り方の手本とは、しっかりと対峙した姿勢のもとでの対話なのだ。
穏やかに静かで明瞭な口調を心がけ、状況と自分の判断の理由を示し、期待や基準から逸脱していることを問題であると説明解説する。その時、心情や感情ではなく論理が先行しているだろう。
対話とは命令でも説教でもない、対等な会話でなければならない。この方法を身につけられた時、人は育ち、育てる方法を修得したことになる。仕事や組織は対話によって進められるべきものなのだ。
イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵