水産業の流通問題(その1) − 第4回 大きく変わる業種・産業界
A 水産食品の流通構造
サカナ消費大国の日本では、全国の漁港からの氷漬け水揚げ高より空輸で全世界から箱詰めで届く物流が多くなっています。(2008年漁業センサ ス&2010年貿易統計、水産白書)冷凍のエビ、カニ、イカ、タコ、アジなどの食卓に登るサカナは、すでに日本近海での漁よりも世界の養殖池や漁船から届 いているのです。
回転寿司のネタ加工はアジアの工場から届きますから、鮮度が大事だと言いながらも冷凍解凍技術が進み、見た目も食味も変わらない状態で並んでいるのです。水産業マーケットは貿易と冷凍技術によって支えられていると考えても良いでしょう。
私達が想像している築地市場や漁港の市場よりも、空港や港からの流通量が多いことは、物流にとって重要な視点です。築地市場の移転が話題になっています が、全国の水産卸売市場の経営は大変厳しく、市場の経営統合や地方民間市場の廃止など、政策がどんどん変化してきています。
野菜と同様に「市場外流通」が増加傾向にあり、価格形成もスーパーのチラシに合わせた指値で取引されるようになってしまうと、天候による漁の出来・不出来よりも輸入量の調整に関心が向かうのも仕方がありません。
主な輸入品目では、マグロ、エビ、カニが大半を占めており、まさに輸入のサカナは『回転すしメニュー』であることが分かります。
当然、この傾向が影響して全国の漁協や地方市場での鮮魚消費は低迷しており、漁業就業者20万人にとって、海の漁ではジリ貧になっていることが想像でき ます。そのために我が国では水産業支援が充実しており、漁船購入や漁協の設備高度化に対して世界比較でも多額の補助金、助成金が支出されています。その額 は世界でも突出しており、「守らねば維持できない産業」として農水産業があるのです。食料自給と第1次産業の維持は、国防・外交と並んで我が国では悩まし いけれども、重大な課題を持っているのです。