物流不動産ビジネスを考えついた人 − 第1回 物流不動産のにぎやかな人たち
今月からは趣向を変えてみようと思います。我が国の実体経済は長期停滞に陥る雰囲気もあり、「あ~すればいい、こ~すれば良い」的なコラムでは信憑性も怪しいと思われそうなので、物流不動産ビジネス現場で活躍している面々を覆面紹介しながら、人材育成のヒントにしていただければと幸いです。
第1回 物流不動産ビジネスを考えついた人
世界が情報化時代を迎えて、今までの生産活動や営業の形態が大きく様変わりしました。カイシャも激変して、従業員の多さや工場や本社ビルなどの固定資産が必ずしもキャッシュを生むこととはならなくなったのです。情報技術やインターネットという新しい技術革新がまったく新しいチェンジをもたらしました。今までの仕事がこれからどうなるか?不安と混乱が続く中で、物流だけは「どれほどITが進んでも、数えて運ぶという実態物流はなくならないさ!」と、倉庫業、運輸業の人々はずいぶんとタカをくくっていました。
ロジスティクスやSCMという経営理論が浸透するにつれ、このような安逸感はどうも「こんな筈ではなかった!」という失望が生まれ始めました。
社会の常識が変わるにつれ、産業規制=過保護行政も転換し始めて、地域の特権だった運輸業免許や倉庫を保有しなくても倉庫免許が下りるようになり、規制緩和=自由競争の激化、が現実となったのです。
ITは生産と販売の光速化をもたらし、“時間稼ぎの代表格”としての在庫商品はどんどん低減してきて、倉庫に空きが増えてきてしまったのです。トラック持ち、倉庫持ちの大旦那衆にしてみればいきなり足元をすくわれる格好です。
持たざる者が古くから持っている者より、ひょっとすると偉くなるかも知れない、そんな恐怖が現実になりつつあったのはわずか15年ほど昔のことでした。
「泣く子と地頭には敵わない」と言われて絶対的な優位にあったあったはずの土地持ち、資産持ちの倉庫業者や古参の運送業者にとって、コペルニクス的大転機が起きたのです。同時に貿易関係でも特殊な利権を持っていた港湾地域でも、「港湾ビッグバン」というような大きな嵐が訪れました。
「所有が不利で、利用者が神様」そんな価値観の喪失を傍目に、ピンチはチャンスと考えたのが物流マンの中にしっかり芽生えていたのです。
従来の倉庫業から行動原理を大転換して、物流不動産ビジネスと銘打った男がいました。インターネットを駆使して、しかも古来の営業スタイルである「人間関係=情実と浪花節」を洗練させた仕組みの開発。それがイーソーコの前進だったのです。大谷巌一(現副社長)が物流不動産ビジネスを唱え始めたのは、わずか10年前の小さな事務所の中でした。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)