物流が面白いと考える人 − 第4回 物流不動産のにぎやかな人たち
会社ができると不思議に人が集まり始めました。物流倉庫の営業マンは電話を掛け、人に会うのが仕事。アバンセが考えて始めたことは、口コミであっという間に広まります。業種を超えて、物流業者以外にも「なんだそりゃ?」というわけです。
95年に日本で商用化されたインターネットは急激な成長を始めていました。すでにネットを利用した情報の販売や商談も始まり、電子メールと携帯電話があれば、社長と末端の営業マンだけでビジネスが完結する。いわば管理職殺しとも言われ始めていました。
住宅情報大手のアットホーム社松村社長も輪転機を使った物件印刷会社から、ネットや高速通信を利用したファクトシートの原稿作成を遠隔在宅で行ったり、業界情報の上でも宅建試験の講習などもネット上で開始していました。
アバンセはこの様な住宅情報ネットワークに詳しい田中さんと出会い、そのシステムの制作をお願いしたのです。ただ、システムを作ればそのままビジネスになるわけではありません。店を構えたからといって千客万来となるわけもなく、価値ある情報や契約に至るプロセスにはITとは別の視点が欠かせません。
完成したイーソーコ・ドットコムには、様々な業界が関わったからこそ商売の基本に忠実でありました。それは、営業マンのヒューマンネットワークを最重視した点にあります。倉庫物件がネット上で公開されると、今まで奥の手や秘蔵物件情報を持っていた倉庫営業は大反対するはずでした。
しかし、大谷の説得や彼のホラ話にただ者ではないと感じた多くの物流業者は、「情報は共有財産、営業は個人勝負」ときっぱりと宣言を行ったのです。
自らの物件を開示してみて始めて情報の多さ、またその不確かさが判明して、営業スタイルの大転換が必要になりました。
数えて運ぶ、保管する、と極めてシンプルだった物流が、実は顧客視点や世間の常識からみれば多いに欠点があり、糺すことの多さあきれた。
大変だ、でも面白い、何とか実になるだろう、という実感が関わっていた多くの人に共通の感想でした。
古く大きな業界こそ、切れ目を入れて掘り返せば面白い!
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)