物流不動産ニュース

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SCMと物流 - 第8回 物流改革大全

物流改革の本命は「物流を限りなくゼロにすること」でした。運ばない、置いておかない、しかも売り切れを防ぐにはどうしたらいいのか。

その答えがSCMという経営思想であり、哲学と手法でした。つまり、売れるものだけを作り、運ぶ、という限りなく物流をやらない方式への挑戦です。物流問題がいつもコスト問題として取り上げられ、しかもその評価が売上高に対する比率で示されるから、売るための最小コストが目指す目標だったのです。

SCMは画期的な考え方です。商品や製品の様々な工程を情報システムでつなぎ、一切のムダをなくし、売れる分だけの在庫を許す。今眼の前にある在庫は、明日は売れてしまう事を約束したのでした。

ではどうやって実現するのか、そこに焦点を当てると大変な問題点が浮かび上がってきたのです。なぜ在庫するのか、なぜ配送するのか、なぜ売れない時があるのか、なぜ品切れするのか? それぞれの問題や症状には原因があり、対策も可能でした。

ところが、SCMを極めようとすればするほどその原因が組織や心理、活動している部門や会社同士の対立を招くことになったのです。

例えば、なぜ在庫するのか=どうして倉庫や物流が必要なのか、を問うときには反対尋問から始めるとわかりやすいでしょう。在庫が多いというのは悪いことなのかという質問です。

製造部門は品質とコストにコミットします。安定的な質と価格は、生産量に左右されるので在庫を見込んで多目に生産を行います。品切れや不良品歩留まりを恐れるので、許される判断です。

販売部門は売上と欠品による販売機会喪失にコミットしますから、品そろえの充実と多目の在庫を歓迎するのも自然の流れです。

財務経理部門は在庫という流動資産を嫌いますが、現預金と同じ資産勘定なので多い事は企業規模にもなるので、在庫を極端に回避しようという意思は働きません。製造販売部門の意向に反論し辛い立場です。

経営陣は売上と機会損失、製造コストに最も深い関心を持っていますから、在庫がないと〜と言う現場の意向を強く否定する事はできません。

得てしてこの結果は、在庫は悪だと言う衝撃的な発言にはつながらず、誰かの見解に過ぎないと言う判断に落ち着き、在庫は増え続ける傾向を止める事はできないのです。

SCMが在庫削減にどんな手法を取り入れるのかは、以上の理由から大きな関心を持って期待されたのです。どうすれば在庫を抑制できるのか、というより各部門を説得させるにはどんな情報と条件を提示する事ができるのかが問われるのがSCMの課題だったのです。付け加えるなら、SCMで成功している企業は数えるほどしかない、という現実にも目を向けるべきでしょう。SCMでは会社は変わらなかった証拠なのです。

 (イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵)