ロジスティクス・トレンド 編集 久保 純一記者 − 記者に聞く 第5回 
―経歴について教えてください。
大学卒業後、営業職を経て専門学校に再入学し、グラフィックデザインについて学びました。デザイナー兼編集者として出版社に就職しましたが、いつのまにか記者としての仕事の比重のほうが多くなっていました。
記者としてはペット業界や賃貸ビル業界の業界紙などで経験を積んできましたので、物流業界との関わりは多くありませんでした。しかしどんな分野であってもビジネスの仕組みに大きな違いはありませんし、経営という観点に立って見ればひじょうに多くの共通点があります。
何より物流は、流通経済においてすべての業種と関わりがあるといっていいほど幅広いカテゴリーを内包しています。言い古された表現かもしれませんが、物流は実体経済を支える重要な機構だということをあらためて実感しています。
―「月刊ロジスティクス・トレンド」についてご紹介ください。
「ロジスティクス・トレンド」という媒体名には、物流を表す「LOGISTICS」と、理念を表す「LOGIC」という二つの意味が込められています。より高度な物流システムの実現を目指し、「施設」「運営」「IT」「ビジネス」など幅広い視点から情報をお届けしています。
毎号掲載している特集記事は事例集的なファクターの羅列ではなく理論を重視した内容とし、物流以外のビジネスにも応用できるような普遍性のある雑誌づくりを心がけています。一見すると物流とは関連性の薄い内容に見えてしまうこともあるかもしれませんが、むしろ他業界では当然のこととして受け入れられているようなロジックを紹介し、これを物流業務に導入することで業務の高度化の一助になれば、という視点に立った誌面構成としています。そういう意味では、他の物流業界誌よりもアカデミックな内容かもしれません。
―物流業界内で注目されている動きはありますか。
物流市場全体の動きでいえば、大規模高機能型の物流施設、いわゆるメガ倉庫といわれる物件の隆盛が気になります。ここ数年来メガ倉庫の建設が相次ぎ現在でも各地で開発が進められていますが、その要因としては「ファンド化によって潤沢な資金を得た海外デベロッパーの進出」「eコマース市場の増大による流通形態の変化」「3PLの勃興」「道路交通の整備」などが挙げられます。しかし物流の総量を重量ベースでみると、総量に大きな変化はありません。これを「荷物が増えていないのに倉庫ばかり増える」と否定的に見る向きもありますが、その一方で荷物の「個数」が増加しつつあるという観測もあります。
またeコマースは、従来の流通よりもスピードが求められます。「荷物の小口化=個数の増大」と「スピードへの対応=システムの効率化」というニーズに対して、物品の保管を主な目的とした既存倉庫が対応するのは容易ではありません。さらにいえば、メガ倉庫のシェアが半数ほどを占める欧米に対し、国内ではまだ数パーセントにすぎません。いわゆるメガ倉庫の隆盛は、世界的な動きでもあるのです。
昨今は国内デベロッパーの参入も相次ぎ、「既存の倉庫からメガ倉庫へ」という流れは今後も続くと考えられます。メガ倉庫とそれを取り巻く動きは、物流業界で今もっとも目が離せないファクターだと思います。
―今後の物流業界はどう動いていくと考えていますか。
メガ倉庫の増加は物流の高度化・効率化という観点からは肯定すべき動きですが、しかし既存物件の空きが目立つようになってきたのも事実です。流通形態の革新によるニーズの変化が主な原因とはいえ、そのあおりを受けて空き物件が増加しているのです。玉突き現象によって発生した既存空き物件の活用は喫緊の課題であると感じています。
こうしたなか、空き物件を否定的にとらえずビジネスに結び付けようという動きがではじめています。既存空き物件を有用な不動産ととらえ、新たなニーズを創出してマッチングする「物流不動産事業」です。今はまだニッチですが、今後も続くであろうメガ倉庫の増加を考慮すれば十分な将来性が見込めるといっていいでしょう。とはいえ物流不動産事業には物流と不動産、双方の知識が必要で、実際に参入企業の多くが倉庫関連業を本業としています。今後は他業種からの参入も想定され、さらなる市場の拡大が予想されます。
―今後の誌面展開についてお教えください。
当誌としても空き物件問題解決のためのスキームを提言していきたいところですが、既存空き物件の活用に必要なのはメガ倉庫との競合ではないと考えています。メガ倉庫と既存の中小倉庫とは規模も機能も全く異なりますし、ニーズがメガ倉庫に向いている以上その流れに逆らうことは困難です。こうしたなか、倉庫からオフィスへのコンバージョンなど新たなニーズを創出する動きが盛んになっています。新しいニーズを創出するために必要な理念や概念を、今まで以上にお届けできればと考えています。
誌面構成については、物流施設の活用策といった具体的な事例を盛り込んだページを増やすことを検討しています。どの程度のリニューアルになるかはまだ検討中ですが、近いうちに正式にリリースできると思います。これまでの「理論」や「理念」に加え、「事例」「実践」といったすぐ役に立つ内容を織り交ぜた物流総合誌を目指していこうと考えています。
▼ロジスティクス・トレンドHP
http://www.logitrend.info/