SCM共同ネット研究会・イーソーコ共催▼ICLTセミナーに160人 
2010年03月03日 SCM共同ネット研究会(滝沢保男幹事長)は2月26日、東京・芝浦で「ICLTセミナー」を開催した。定員120人のところ、160人が参加し、予備のいすを出して対応する盛況となった。
<会場は160人と超満員>
<「物流不動産ビジネスに出会い他社との差別化に」
と秋元運輸倉庫・鈴木取締役>
冒頭、開会の挨拶(あいさつ)には、秋元運輸倉庫の鈴木取締役が「10年前物流不動産というビジネスに出会った。当時は、どんなものかしっかりと理解せずにやっていた。今思うと、他社との差別化となり、当社にとって大きな転換期だった」とした。具体的には、今まで話もできなかったメーカーへ、営業のきっかけとして有効に活用してきたという。
また、同会の友田健治副会長(トーワード物流社長)が「当社は九州の物流企業だが、九州は物量がシュリンク(縮小)している。今のままでは、物量と同様に業界全体も縮小していかざるを得ない。それを回避し、会社を伸びていくためには、いろいろなことに挑戦し、既存事業と組み合わせることで、新たな付加価値を付けていくことだと考えている」とした。その“新しいこと”と“組み合わせる”ことを実現するために、SCM共同ネット研究会が一番と考えた。
▼ゆで蛙状況に早く気づいて!
<「ほとんどの中小物流企業が“ゆで蛙”状況になっている」
とイーソーコ・大谷副社長>
基調講演はイーソーコの大谷巌一副社長。友田副会長の言う“物流がシュリンクしている”という現実を、データを見せながら説明していった。
まず、物流業界の物量の減少や、倉庫保管残高の減少といった推移をグラフで解説。「長期にわたって悪化をしている。ここで怖いのが、悪化していることに慣れてしまうこと。現実から目を背けていては、いつの間にか取り返しのつかない状況になり、破綻してしまう。これを“ゆで蛙”(※)状況というが、ほとんどの中小物流企業で“ゆで蛙”状況になっている」と警鐘を鳴らした。
“ゆで蛙”状況からの脱却に向けたキーポイントは、「考え方を変えないといけない。そのためには、ITを使って、様々な会社とネットワークを構築することだ」(大谷副社長)とした。
もちろん、ネットワークを構築するコツがある。「自社の強みを再発見すること。他社をリスペクトすること。そして、情報を発信すること。そのやり方は物流不動産ビジネスで、当社が実践してきた。物流不動産ビジネスをやることも、一つの答えだとおもう」(大谷副社長)とした。
情報を発信するのに必須となるのがITだ。お金があれば、日経新聞やテレビCMなどを使って、自社PRをすることができる。しかし、それはお金のある“大手”だけ。中小企業にはほとんどできない。一方、インターネットは誰でも利用できるもの。それを使わずに自社の強みを宣伝しない手はない。「それをせずに、不況で苦しいと言っているのは、努力が足りない」(大谷副社長)。
実際に、ITを使い、自社の強みを考え、物流不動産ビジネスをやっている複数企業の売上高についても、資料として見せた。
さらに「SCM共同ネット研究会の強みは、ネットワークが物流に限られていないこと。荷主も含めた様々な業界が参画しており、それを活用しない手はない」(大谷副社長)とした。
▼新時代の共同物流を描く
基調講演の後に、SCM共同ネット研究会の滝沢代表が同会の活動状況を報告した。
<「一社ではできないことも、数社が集まれば可能になる」
と滝沢代表>
同会が進展する物流不動産事業プロジェクト、次世代共同物流事業プロジェクトなどを紹介。今後の物流業界を「所有ではなく、利用する時代に入っていく」とした。
その中で、物流企業も全て自分でやるのではなく、他社とのネットワークを活用して共同で生き残っていく方法を説明。「一社ではできないことも、数社が集まれば可能になる。物流企業が商品提案もできるし、大手に負けない共同配送も提案できる」とした。
滝沢幹事長が提案する新世代の共同配送の姿は、物流企業が荷主に「荷物をください」というのではなく、荷主に商品や販路を提案し、物流を作っていくこと。そのためには、複数、異業種企業とのネットワーク化が不可欠となる。
現在の会員間で動きはあるものの、物流業界全体を動かしていくために、さらなる会員増強を図っていく。
その後、SCM共同ネット研究会の会員によるプレゼンテーションがあった。イーソーコの早﨑幸太郎IT部係長はLSS(物流営業支援システム)を説明。10年前とのITインフラの違いを携帯や就職活動のやり方の違いを基に解説した。
その中で、LSSを使って年間1200万円の売上増を行った企業や、年間400万円の駐車場代を削減した企業の実例を示していった。
また、トワード物流からは、友田昭二副本部長が、同社の交通事故防止、エコドライブ推進のECO-SAM(エコサム)を説明。実際に、導入した企業では、100万円以内の投資で収まり、年間150万円以上のコスト削減といったメリットが出たという。
ビジネス・インフォメーション・テクノロジー(BIT)は、宮島嘉久専務が携帯電話や固定電話の通話費用を削減の提案を行った。BIT社は、いろいろな業界への提案を行っており、各業界で実績を積んできている。
セミナーでは、物流企業への導入実績を紹介。社員40人の企業で、電話代が3~5割削減したという。
それ以外にも、LEDや省エネ蛍光灯、印刷機のトナー使用量を削減する機械なども取り扱っている。
(※)ゆで蛙
水に入っている蛙は、水をだんだん熱くしていっても、気づかずにそのまま熱さで死んでしまう。一方、熱いお湯に蛙を入れれば、びっくりして飛び出すという“たとえ話”。だんだん悪化していく環境内にいると、それに慣れてしまい、最悪の状況まで事態が進行していくこと。