物流業界にとって天恵の太陽光発電▼今こそ導入の時 
2012年10月18日 【物流ウィークリーhttp://www.weekly-net.co.jp/】
再生可能エネルギーの固定価格買取制度が7月1日から始まり、北海道内でも太陽光発電を導入する企業の動きが「エコよりも収益への関心」により加速度的に広がっている。物流業界でも本州を中心に太陽光発電導入の情報が次々と発表されているが、「道内の物流業界」は未だ積極的とはいえない状況だ。1kw42円で20年間も電気を買ってもらえる太陽光発電に対し、「絶対に儲かる」「こんなおいしい話はない」などと喧伝されているが、果たして本当なのだろうか。
物流コンサルタントの花房陵氏(イーソーコ総研主席コンサルタント)は、「これこそが物流事業者にやってもらいたい天恵のような制度。不動産を持っている物流業界は積極的に導入し、儲けてもらいたい」と断言する。全日本運送業経営支援協会(中野幸一理事長、札幌市中央区)が9月11日に開いた「物流業界の電力とエコを考えるセミナー」での講演内容を紹介する。
花房氏は、太陽光を含めた再生エネルギーによる発電賦課金が8月から利用者に転嫁され、電気料金が値上げされていることを指摘し、「太陽光発電は税金を使わず、広く薄い利用者の負担により、新しい産業を育成しようという、これまでになかったもの」と紹介。
続けて「家電エコポイント制度に4000億円、エコカー減税に7000億円、エコ住宅に4000億円と近年、家電、自動車、住宅、小売りといった業界には国をあげての振興策がとられてきたが、物流業界は規制緩和後、競争が激化しただけで、これまで何もしてもらっていない」と述べ、「物流は製造業、不動産開発業に次いで、日本で3番目に不動産を持っている業種。駐車場、荷さばき場、倉庫など多くのスペースを持っており、太陽光発電に適している。大手だけが取り組める特権的な事業ではないので、電気を売ることで不動産で稼ぐのもいいのではないか」と話した。
しかし、導入する側にとっては、多額の設備投資費用が必要となるほか、「そんなに長期間、目論見通りに発電するのか」「当初の計算より日照時間が短かったり、発電性能が落ちたりするのではないか」といった心配もある。
このような懸念に対し、花房氏は「太陽光発電の導入費用は今、金融機関から借りやすくなっている。ファンド会社に資金を集めさせ、SPC(特定目的会社)を作ってノンリコースローンで融資を受けるという手法も可能だ」と説明。また、「本当に発電し続けるのか」との心配には、損保会社による保険や、天候デリバティブといった金融商品でカバーできるとし、「20年間の固定価格モデルは、1050時間の日照時間で引き合うよう計算されたもの。日本の平均の日照時間は1600時間程度なので、大きな心配は必要ない」と話す。
太陽光発電が普及しない道内の物流業界について、「話がうますぎて怪しいという心理が導入に対する壁になっている」と指摘。「太陽光発電は、いわば広い国民負担により収益をあげることが保証されているようなもので、物流業界にはうってつけ。導入が増えるほど、利用者の電気料金にはね返ってくるため、利用者が料金負担に耐えられなくなると制度が破綻してしまう。先行する欧州の事例を見ると、このような固定買取制度が続くのは、3~5年のはず。用地先取り合戦が始まっている今こそ、導入してもらいたい」と促している。