中小企業金融円滑化法後の倒産懸念▼来年3月末で終了 
2012年12月03日 【物流ウィークリーhttp://www.weekly-net.co.jp/】
リーマン・ショックによる景気悪化にともない、中小企業の資金繰りを支援するために実施されてきた中小企業金融円滑化法が来年3月末で終了する。貸付条件の変更など借り手側の求めに可能な限り応じることを金融機関に求めた同法は、一方では「つぶれるはずの町工場を延命させようとするから、倒産にともなう中古機械の引き揚げは消え、かといって新規投資による機械の搬入需要もない」(精密機械を運ぶ運送関係者)と、被害を周辺事業に拡大した感もある。
ただでさえ運賃と荷動きが低迷し、燃料など仕入れコストの増加に苦しむトラック業界の現場には悩ましい声が充満している。
自動車関係の物流を手掛けてきた西日本の運送会社。「みんな涼しそうな顔をしているが、円滑化法で延命してきた同業者は少なくないはず。うちだけが特別ではない」(同社社長)と話す。セーフティネット貸付や緊急保証制度を活用したトラック事業者は少なくないが、同制度で数台のトラックを新調した同社は現在、来年3月末の期限切れを深刻に受け止めている。
「あまりにも輸送受注の波が大きかった」と、一時に比べて自動車関係の仕事を大幅に減らした。代わりの売り上げは長距離の仕事に求めたが、「高止まりの軽油代や労働時間対策などで新しい悩みも増えた」という。「例えば、3万円の仕事を2万7000円で傭車に回し、その傭車先が3万円で受けた仕事を2万7000円で返してもらうというキャッチボールの格好で、見た目の売り上げを水増しする同業者も知っている」とあきれるが、当面の課題は来年4月以降のリスケジュール。「現状では金融機関がリスケに応じてくれるだけの経営改善計画を示せない」と嘆く。
食品をメーンに数十台のトラックを動かしている同エリアの運送会社。「運ぶだけではダメになる」との思いで、5年ほど前に建設した一時保管施設が現在、重荷になっているという。運賃とは別に見込んでいた保管料は、荷物を確保するための無料サービスとして消え、借金だけが増えた。
関西や中部方面から荷物の引き取りも多く、周囲からは「悪くない運賃」といわれるものの、「(運賃には)小型トラックによる地元でのバラマキ作業が含まれているから、仮に関西から大型車で片道8万円をもらったとしても、決して中身がいいわけではない」と同社社長。そこで思いついたのが域内の小口混載便で、「どうせ走らせるなら、安くても相乗りの荷物をかき集めよう…そう考えたが、柱になる荷物が出荷量の確保をチラつかせて値引きされ、揚げ句の果てに物量自体が減ってしまったことで余計な仕事(かき集めたハンパな荷物)を抱える形になってしまった」とタメ息をつく。
帝国データバンクは平成21年12月から、「金融円滑化法に基づく貸付条件の変更などを受けていたとされる企業の倒産」(負債1000万円以上、法的整理のみ)の集計を開始しているが、それによれば今年9月は36件(負債総額199億600万円)。調査開始からの倒産総数は484件となっているが、今年の第3四半期(7─9月)には前年同期の2.35倍となる122件を数えるなど倒産ペースの加速ぶりが顕著になっている。