国交省▼大綱議論、折り返し 有識者委 目標の具体化が焦点 
2013年03月04日 【輸送経済(http://www.yuso.co.jp)】
次期総合物流施策大綱を議論する国土交通省の有識者委員会は19日、提言の取りまとめに向けた検討に入った。これまでの議論で挙がった物流の課題について、事務局がテーマごとに論点を整理。たたき台を基に4月まで議論を重ねる。一方、委員からは大綱の数値目標や進捗(しんちょく)評価などが欠けているとの意見が。目標の具体化は今後出される提言の焦点になりそうだ。
国交省は、大綱で打ち出す物流施策のテーマとして(1)国際化と構造変化への対応(2)低炭素化(3)安全・安心の確保――の3本柱を提起。テーマごとに個別課題や取り組むべき施策などを挙げ、これまでの議論で委員から上がった70項目の意見を当てはめた。
有識者委員会は提示された論点を軸に議論を進め、4月30日に開かれる委員会で次期大綱の提言を取りまとめる。
チェック不備委員から苦言
ただ、次期大綱策定をめぐっては委員から注文がついている。19日の委員会では重点施策の具体化に加え、目標の数値設定、達成時期、定期的な進捗確認も明記するべきとの意見が相次いだ。
日本経団連の丸山和博委員は現在の大綱について、「内容が総花的で定量的な目標や進捗評価の仕組みがないから未実現の目標が出ている」と指摘。他の委員からも「課題の記述だけでなく解決方法やチェック体制も考えるべき」「大綱を第三者的に評価する考えがあっても良い」といった意見が出た。
「コスト低減」誤解生む表現
国交省物流政策課の馬場崎靖課長は「新たなものをつくる前のフォローアップはする」とし、次期大綱ではPDCA(計画・実行・評価・改善)の体制を整える考えを示した。
議論では、国が示した個別テーマに委員が疑問を投げ掛ける場面も。特に「物流コストの一層の低減」を明記したことについて、委員から異論が続出した。東芝の正木祐二委員は「産業界が求めているのは港湾や空港の効率を上げろということ。この表現は誤解を生む」としたほか、「物流コストはサービスレベルで決まる。効率化によって削減を目指すべき」などの意見が飛び交った。
物流コストや効率化に関連して、国民の物流意識向上や長期的な人材育成の方針を大綱に盛り込むべきとする委員も。
国民意識の盛り込みも要請
効率化は荷主や物流事業者だけが努力するのではなく、「物流の見える化を進め国民へアピールすることも重要」「国民が過剰な物流サービスを求めることでコストが上がり悪循環を生んでいる」といった声も上がった。次期大綱では外部環境をいかに整備するかも重要な検討課題になりそうだ。(小林 孝博)