日本自動車ターミナル▼河島 均社長インタビュー 
2013年09月12日【輸送経済(http://www.yuso.co.jp/)】
都内に持つ京浜、葛西、足立、板橋の4つのトラックターミナル(=TT)の再開発を、今後の最重要課題とする日本自動車ターミナル(本社・東京)。「時代のニーズを把握しながら、最適な施設とサービスを物流の世界に提供することが大事」と6月に就任した河島均社長。早期に再開発計画を具体化させる方針だ。
――就任から2カ月。
河島 就任後すぐに4つのTTを回り、当社の現状や方向性の把握に努めてきた。物流は一般の目にあまり触れない業務だが、都市の暮らしや産業・経済活動を支える重要な機能だ。TTの運営主体として、その機能を、時代に合った形でどう支えていくかが大事だ。
――間もなく設立50年。時代も大きく変化。
河島 当社のTTは高度経済成長期に整備が始まり、都市の発展に合わせて活用されてきた。だが、半世紀ほどたったいま、社会・経済の変化に伴い、物流のニーズは激変。TTの運営を行う当社に求められるニーズも変化している。時代に合った施設やサービスを提供するために、当社自身も変革していかなければいけない時期だ。
――どのような姿勢で事業に取り組む。
河島 新しい総合物流施策大綱にも「トラックターミナル高機能化の促進」が盛り込まれた。環境、災害対策を含め、施設の高機能化は政策に即した取り組み。時代の変化や顧客である利用事業者の意見を的確に捉え、最適なサービスの提供を基本に据えたい。
――今後の施設造りに求められることは。
河島 例えば、迅速性が求められるネット通販の世界では物流システムの革新が進んでいる。最新の物流事情を十分に把握しながら、利用事業者に使いやすい施設を提供することで、より効率的な物流を支えていきたい。
立地特性生かし再開発推進
――施設の再開発はどう進める。
河島 4TT全体で再開発を進めることが基本姿勢。計画は検討中だが、まず湾岸部に立地する京浜や葛西中心に推進することになるだろう。湾岸部は新規の物流施設建設が進むなど需要の高いエリア。特に京浜は開設から45年ほどたっており、重点的に再開発を進める施設になる。
――施設立地の利点を生かす。
河島 4TTは、東京都心の外周部に大規模なスペースを持つという有利な条件がある。内陸部の足立、板橋も都内だけでなく埼玉や千葉など近隣県の集配もカバーできる。こうした立地の特性をうまく利用事業者に生かしてもらえる施設造りを進めたい。
適切な料金水準を検討
――スケジュールは。
河島 利用事業者のニーズを把握した上で、できる限り早く計画を具体化したい。具体化を進める中で利用事業者の新しいニーズを掘り起こすことができれば、それに応じた施設造りが可能になる。
――暫定措置でバース料金6%減額を継続。今後の料金の在り方は。
河島 現在のバース料金の減額は利用事業者の経営環境を踏まえた来年3月までの暫定措置。今後は、利用事業者の声によく耳を傾けつつ、どのような料金水準が適切かを検討していく。
――施設の災害対応力も引き続き強化する。
河島 災害時、TTを支援物資の広域輸送基地として機能させるには事前準備が最重要だ。すでにBCP(事業継続計画)や衛星通信による緊急連絡体制を整備。各TTへの非常用自家発電機設置も進めている。今後は、昨年都と結んだ災害時協定に基づき、業界団体とも連携しながらマニュアルをしっかりと整備していく。
記者席 意志ある所に道はある
都技監時代、災害時の緊急輸送道路確保へ、倒壊の恐れがある建築物の耐震診断を義務付ける条例策定にまい進。条例が全会一致で可決・成立した日、くしくも東日本大震災が発生した。
いまでは対象建築物のうち6割の診断が完了。費用を都が全額補助する異例の措置も都民の理解を促した。その後、診断義務付けは国の法律にも盛り込まれた。「条例を通じて、社会全体の耐震診断に対する意識が変わった」
学生時代に使っていた大学ノートの表紙にあった「Where there is a will, there is a way(意志ある所に道はある)」という言葉が信条。「本気でやろうと思わなければ、できることもできない」。2年前、杉並区が提供する農園に小さな畑を借りた。「毎日出勤前に寄り畑仕事をやる」。奥さんとの週末のドライブも息抜きに。
(略歴) 河島 均氏(かわしま・ひとし) 昭和27年3月31日生まれ、東京都出身。61歳。昭和49年東大工卒、東京都入都、平成15年知事本部政策担当部長、知事本局次長・都市整備局理事航空政策担当、都市整備局長、東京都技監などを経て、23年東京都住宅供給公社理事長、25年6月日本自動車ターミナル社長。(水谷 周平)