【集中連載】アスクル火災を追う(3)ベルトコンベヤとシャッター 
センター内には高所に端材搬送用の「ベルトコンベヤ」が張り巡らされ、ピッキング等で不要となった空段ボールが投下されていた。高さは最大で3m、作業者が端材を投入する部分では1.5m。
コンベヤ分岐部に隙間がある場合、搬送中に落下した端材でシャッターの閉鎖障害が発生する可能性があるため、可動シュートと下流ベルトコンベヤを重ねて設置。可動シュートは自動火災報知設備の信号により、上方に跳ね上がる構造としており、防火シャッターの閉鎖支障とならないように設計されていた。
また、折りコンや瓶などの商品を自動搬送させる「ローラーコンベヤ」は、作業者の目の前にレイアウトされており、防火シャッター対策用には可動式渡りローラーを設置。自動火災報知設備の信号により、下方に動く形としていた。
しかし、両コンベヤは商用電源を使用、停電時には作動しない点、耐熱性のない一般配線が用いられており、制御盤を収納する外箱は、不燃性・難燃性のものではない――点が共通していた。
設計上では防火シャッターの降下信号を受けた際に可動部分を作動させることで、閉鎖を妨げないものとされたが、実際に閉鎖障害が確認されたのがベルトコンベヤだった。閉鎖障害の原因として、倉庫内に保管されていた荷物その他の物品がシャッターの降下位置に放置・存置されていたとも見られている。
国交省と消防庁が合同で開かれた第2回「埼玉県三芳町倉庫火災を踏まえた防火対策及び消防活動のあり方に関する検討会」で、下記のように検討された。、
第1系統:
伝送線の一部(伝送線に接続するアナログ感知器を含む)の回線がショート(短絡)し、結果として系統全体の機能が喪失した
第2系統:
シャッターを起動させる動力となる電流を送るための制御線の回線がショートした結果、点検時のショートによる受信機の損傷を防ぐために設けられた電流ヒューズが溶断し、その結果、制御線全体の機能が喪失した
上部に見える端材搬送用ベルトコンベヤと
作業者の目の前には商品搬送用のローラーコンベヤが設置(2階/出典・消防庁)
消火活動の中心となった入間東部地区消防組合消防本部は、防火シャッターの作動状況について「内部進入箇所により異なるが、煙及び物品の荷積み状況により部分的なシャッター開閉は確認することはできた。しかし、濃煙状態の中なのでほとんど確認できていなかった」とコメント。
検討会では、防火シャッター可動部分の作動に関わる部分について、(1)火災信号や電源を適切に確保するための措置、(2)火災信号や電源の確保が適切に行われなかった場合を想定した可動部分の設計、(3)倉庫内物品は、防火シャッターの降下に支障を来すことがないよう、適切な管理を行う点を指摘した。(続く)
ロジスティクス・トレンド(株) 水上 健