【集中連載】アスクル火災を追う(4)倉庫と消防法 
アスクル火災に伴う、国交省と総務省・消防庁による合同検討会が21日に開かれる。
次回が最終となる見通しだが、出火原因はいまだ明らかにされていない。「タバコの火の不始末」説、「漏電」説、「フォークリフトのツメ、タイヤ空転時の出火」説など、巷間囁かれているが、物流業界での関心は今後厳しく制定されると予想される法規制に移っている。
倉庫の火災は一般的建築物と比べ、より危険性が高まる。建物内に可燃物を大量に収容している場合が多く、出入口や開口部が少ない。建築基準法第112条「防火区画」では「延べ面積の合計1500m2を超えるものは、1500m2以内ごとに第115条の2の2第1項第一号に掲げる基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する建築物の部分でその用途上やむ得ない場合においては、この限りでない」と記されている。
3階に設置された防火シャッター(出典・消防庁)
平たく言えば、床面積1500m2ごとに防火シャッターなどの設置義務があり、自動式スプリンクラー等の消火設備がある部分は1/2の床面積で計算が成り立つ。スプリンクラーは火災を検知し、消火を自動で行う設備。ヘッドの種類や配管内の充水等によって分別されるが、倉庫との相性は極めて悪い。平常時は閉鎖された出入口が温度によって開放、配管内の水を放水してしまう・・・。
ある事業者は「荷主の大切な荷物を濡らすことと、火災で燃えることは同じ。水浸しになるのは絶対に避けたい」と話す。実際にスプリンクラーを設置されている倉庫でも、放水を避けるために水の元栓を断っていたケースも耳にした。
今後の法規制の争点はスプリンクラーか防火シャッターになり得る可能性も高い。倉庫法・建築基準法・消防法と法律がまたがっているためにわかりにくいのだが、本件の取材を進めていくうち、「倉庫は人がいてはいけない空間」であることをよく耳にした。
保管が目的の本来の倉庫はその通りだろう。昨今見られる大型物流センターには保管機能に加え、品揃え、出荷単位調整、混載、納期遵守などの機能が加わる。実際、アスクルの場合は夜勤明けの交代時間ということもあり、物流センター内部に400名以上の人が在館していた。物流センターは製造現場に近い位置づけになってきた。
ロジスティクス・トレンド(株) 水上 健