経済学は社会を描くか behavior(第14回) 物流マネー70兆円のゆくえ
2017年のノーベル経済学賞は行動経済学を研究したリチャード・セイラー博士が獲得した。昨年度が契約論であり、企業行動や企業にとっての事業範囲を研究したものに比べて、行動経済とは人間行動の非合理性を研究したものだ。
経済学が人や企業、国家運営のモデルを元に展開しているが、実際のところ国と生活の安定と幸福が実現されているとは言い難い。特に日本は昭和の行動成長期を終えたところでバブルが崩壊し、平成は連続して不況下にあり、所得格差は毎年悪化している。唯一企業業績が好調なので、株価は25年ぶりの高値を記録したという。これは、デフレ下にあるので円安、資源高、賃金安、リストラ効果、法人減税などが影響している。
大企業はたくさんの恩恵を受けているが、中小民間はそ~でもなく、賃金を上げられないために人手不足がいつまでも解消できないでいる。ちなみに、日本の大学進学率は51%で異常に低いが、学卒就職率は高く、内定辞退率も過去最高とのことで、学生も企業を選ぶ傾向が強くなっている。
行動原理を知るには、コンビニの売れ筋商品を調べる
45年前に生まれたコンビニは小売業の進化を体現している。商品とサービス、営業時間と立地は従来の小売店舗の常識を覆してきた。しかし、超売れ筋は相変わらずおにぎりとお茶である。明治の頃に始まった竹の皮で包んだおにぎり弁当と汽車土瓶のお茶は、今も昔も売れ筋商品なのだ。100年たっても何も変わっていない。果たしてこれが人の行動原理であり、「一斉に右を向く」のが消費者であることの原則が続いている。そこには多様化や十人十色というものはなく、経済学で安い商品だけが大量に売れ続けることが述べられている。
人がすべて同類であるなら、組織もまたすべて同類であり、差別化要素は異端でしかありえない。ゆえにユニークな事業より同業類似の企業が圧倒的に多く存在しており、団子のように連なる業界が競争を避けながら、同じ道を進もうとしている。
これが行動経済学であり、企業の行動モデルである。
物流事業者にも同じ原理が働き、チャンスがあってもつかもうとせず、新たな可能性を切り拓こうという取り組みも避けるのも当たり前の行動になっている。新旧の物流業界もまた同じ道を歩んでいるのだ。新規参入の物流施設開発会社は、旧来の不動産事業を進化させ、開発マーケットを転換させた。巨額な自己資金を長期投資のためにというモデルを資金の流動化と短期金融商品として転売目的で開発を続けているのだ。
旧型物流事業者は我らが進めようとしている不動産と物流の融合ビジネスを傍観するのは、この違いなのだ。
<イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房陵>