物流不動産ニュース

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思い出をしまう倉庫 

倉庫という建物の本質的な存在価値は、極論すれば保管機能にあるといっていいだろう。もちろん流通加工や仕分けといった機能もあるけれど、それは付加価値であって本質ではないのである。

大丸百貨店が、同店にまつわる品物とそのエピソードの募集を締め切った。選ばれた品物は、2019年秋にオープン予定の大丸心斎橋店で一定期間展示される。その期間、なんと300年である。「300年クローゼット」と名付けられたこの企画、大丸の創業300周年を記念したもの。一種のタイムカプセルといっていいが、個人的な思い出の品を300年間にわたって人が管理し、かつ目のとどくところに展示されるという点で既存のものとは一線を画している。しかも保管期間が満了した300年後には、持ち主のもとに返却されるという。実際には、子孫か代理人にだろうが。

倉庫とは異なるが、品物の保管そのものに価値を見出し、かつ保管され続けることで品物の価値が向上するという事例は珍しいものではない。年代物のワインなどはその代表格だし、骨董の類も同様。さらにデッドストックという概念はあらゆる分野に存在する。しかし、個人の記録や思い出を意図的に保管して後世に伝えるという試みは、これまではその個人が自身の責任において行っていたものだ。そこに第三者が介在しはじめたのは、ここ最近の気がする。

この流れは行政も感じとっているようだ。神奈川県大和市では1月から、市民が執筆した自分史の寄贈を募っている。市立図書館に保管して歴史研究に役立てるほか、専用の書架を設けて自由に閲覧できるようにする。市によると、市民から自分史に特化して寄贈を受けるのは全国の市町村で初という。

こうした取り組みは、いずれも思い出を残したいという強い持ちがあってはじめてカタチとなる。デパートや図書館もいいが、思いを受け止める機能をもつ倉庫が、その役割を果たしてもいい。

 

久保純一 2018.2.5