物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

フジサンケイビジネスアイ(1)倉庫の数だけチャンスが生まれる 

イーソーコグループ 会長 大谷 巌一


物流は運送(輸配送)だけでは成り立たない。荷主であるお客様の大切な荷物をお預かり(保管)する重要な基盤となるのが「倉庫」だ。倉庫は物流産業を縁の下で支える黒子という立ち位置だったが、運送と同様、倉庫にも危機が押し寄せ、勝ち組・負け組の線引きが鮮明になってきた。

そこで、筆者は「物流不動産ビジネス」を提案している。自社倉庫を中心とした倉庫営業スタイルから脱皮し、他社倉庫のリーシングやリノベーションまで行う。物流営業を基軸とし、物流業に関連した不動産、建築、IT、金融などの異業種の産業に横串を通すことにより、「倉庫の数だけチャンスが生まれる」メリットを享受することができる。

佐川急便が撤退したアマゾンの荷物を廉価で請け負ったヤマト運輸は、時間指定や再配達などマイナス要素が重なった結果、総数を規制するとともに、セールスドライバーに対する未払い残業代を解消した。このヤマトショックは氷山の一角に過ぎない。物流業界の構造的なうねりが地殻変動を引き起こしている。

日本で貨物輸送の9割以上の物量を担うのはトラック輸送だ。国内の経済成長を糧に発展を続けてきた。しかし、最も重要な担い手である中長距離のドライバーが足りない。アマゾン、楽天をはじめとするネット通販市場が拡大すればするほど、エンドユーザーに運ぶ「ラスト・ワン・マイル」を担うドライバーはひっ迫する。若い人たちがドライバー職に就こうとしなくなった。

負荷がかかると、ダムと同様に“弱い”部分から崩壊する。労働時間は長く、給与体系は低い運送業界の課題は山積しており、過酷な労働環境下でどんどん疲弊してしまう。無駄な価格競争で足の引っ張りあいが生じ、対価として物流企業に支払われる料金の水準が低くなり、コスト倒れの構造を招いてしまった。

意外に思われるかもしれないが、原材料の国内輸送量は2000年以降、減少傾向にある。2000年と15年の貨物総量を比べると約25%低下している。一方で、ネット通販商品や完成品のニーズは増えている。その結果、少量多品種の傾向が加速され、運ぶ回数が増えていく。

ヤマト運輸が宅配便を値上げしたのをきっかけに、物流各社は荷主に運賃是正の交渉を行い、今年の決算でも運賃上昇が焦点となっている。しかし、運賃値上げは新規参入者の増加や自社物流への切り替え、あらゆるものがネットにつながるIoTを活用した合理化を加速させ、結果的に物流の地殻変動が収まることはないと筆者は分析している。

物流形態の変化とともに新型の倉庫が大量に供給され、従来型の倉庫の空きが目立つようになった。この空いた倉庫を物流用途に限定することなく、多目的に活用し、最終的に物流営業を積極化して業態化するのが物流不動産ビジネスだ。

本稿は産経新聞社発刊「フジサンケイビジネスアイ」のBizクリニックコーナーで、大谷が6月から8月までの間、連載しているコラムです。