物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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物流不動産とファシリティマネジメント 

ファシリティマネジメント(FM)という概念は、不動産においてはすでに常識の範疇にあるといっていい。今年4月には、初の国際規格としてISO 41001も発行された。FMサービスを提供する企業の一定基準になると見られ、普及の後押しになるだろう。

しかし現在、国内におけるFMの定義にはさまざまなものがある。今のところ日本で一般的といえる定義は「不動産を所有者にとって最適な状態で維持・保有し、経営する」という根本的な部分だけかもしれない。この定義、不動産所有者にとっては当たり前に聞こえるが、実際のFMはその手法において一般的な不動産経営とは一線を画する。FMの意義は、不動産所有者の事業経営をより良くするという点にある。不動産を持っているのは賃貸事業者ばかりではない。小売業や製造業だって不動産を持っている。単に家賃収入や不動産売却益を得るのではなく、不動産を所有する者の本業を考慮し、その事業経営全体をよりよくするために不動産を活かすのがFMである。

FMの対象となる不動産所有者の多くは企業(法人)だから、CREとの共通点も多い。海外、特に欧米ではFMとCREは別業務とされることが多いようだが、国内におけるFMはほとんどの場合でCREを内包している。これは分業化で個々の業務の高度化を狙う欧米と、不動産業務を包括的に管理することによる効率化を企図する日本、という考え方の違いかもしれない。

あくまで不動産に立脚してはいるが、FMの守備範囲は単なる不動産経営の枠には収まらない。そのため、不動産が本業ではない企業の方が導入効果が高いともいわれている。例えば物流業や倉庫業もそのひとつで、ネットなどでは倉庫・物流施設向けのFMの広告を見かけることも少なくない。なかには物流効率化を狙ったものが「物流ファシリティマネジメント」などと名付けられたりしているが、これは不動産はあまり関係ない。FMの認知度はさほど低くはないのだろうが、筆者は物流業界での導入事例をほとんど知らない。大手の不動産各社もFM事業の一例として倉庫・物流施設を挙げているものの、なかなか浸透していないようだ。いずれも物流不動産を取り込みたい思惑は見えるが、同時に思うにまかせない様子も見て取れる。

なぜ物流にファシリティマネジメントが普及しないのか。一次的にはさまざまな答えがあるだろうが、それらはすべて、一つに集約されるのではないだろうか。要するに、倉庫や物流施設がアセットとして見られていないのである。逆説的だが、物流業者が収益源を保管料や運送費のみに求め続ける限り、倉庫や物流施設のための支出はコストとしてしか捉えることがきないのである。当然、削減すべき対象である。ところが倉庫や物流施設そのものを収益源として捉えれば、そこにかかる費用は投資となる。そこにかけたお金は、いずれ大きくなって戻ってくる。FMを採りいれるか否かは、その判断と重なるところが多い気がする。

倉庫や物流施設をコストセンターではなく投資対象として見ることができるのであれば、収益力を向上させられる可能性はまだ残っていると思うのだが。

 

久保純一 2018.7.5