物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
最新ニュース・情報を発信しています。

  • メール会員情報変更
  • メールマガジンバックナンバー
  • ニュースメール配信登録

鉄道事業を分社化する東急の思惑 

東京急行電鉄が、柱ともいえる電鉄事業を分社化すると発表した。100%子会社を設立して、これまで東急が行ってきた鉄道事業を全て移管する。本体は鉄道事業を行わないので、もはや「電鉄」ではなくなる。そのため社名は子会社に譲り、本体は新たな社名に変更すると見られている。主業であるはずの鉄道事業を切り離し、副業であったはずの不動産事業を残すのである。連結決算への影響はほとんどなさそうだが、それなら何のために分社化するのだろう。

東京急行電鉄単体の直近の営業収益は2625億2800万円で、そのうち鉄道事業の収益は1528億1900万円、不動産事業は1097億円だ。これをそれぞれの業務に携わる社員の数で見てみると、社員数約4500人のうち鉄道事業が約3200人、不動産事業が約400人で、不動産事業の生産性の高さが際立つ。生産性の高い事業を残して低い事業を切り分ける、とう見方も成り立たなくはないだろうが、単純すぎる気もする。

東急電鉄では分社化の理由について、「スピード感を持って多様化するニーズに応えるため」としている。要するに事業ごとに会社を分けたほうが身軽になって柔軟に動ける、ということのようだ。東急史上最大と言われる渋谷の大規模再開発も順調に進んでいる。全てが完成する2023年には、鉄道も不動産もニーズが大きく変わっていることだろう。その前に先手を打っておこうという考えは、納得できるものがある。

もう一つ、理由に挙げていたのが社員の働き方。鉄道事業と不動産事業では、前述の生産性だけでなく業務も全く異なる。特に鉄道の専門職は、入社時からコースが全く別だ。しかもここ数年、鉄道ではなく不動産開発を希望する就活学生が増加しているともいう。交わることのない事業を同じ会社が続ける、その意義を考え直す時期に来ているといっていいだろう。「日本一働き続けたい会社」は、東急のキャッチフレーズのひとつでもあるのだ。

分社化の記者発表会ででた「分社化で不動産と鉄道の連携が薄まり、駅ビルや高架下の開発は逆にスピードダウンするのでは」との質問に対しては、「むしろスピードアップすると考えている」との答え。鉄道関連施設の開発は、不動産部門主導あるいは不動産部門のみの方がやりやすいということだろうか。

記者発表会の終盤、「不動産を主業としてきた東急不動産グループとの協業・連携強化や将来的な一体化の可能性は」との質問が飛んだ。東急側は「考えておりません」と即答。そりゃ、無いのだろうけど。

分社化は来年9月に予定されている。

 

久保純一 2018.10.5