物流不動産ニュース

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ヤマ場と見られた2018年を越えて 

三鬼商事が、都心のオフィス空室率が1.98%を記録したと発表した。データの残る2002年1月以降では初の1%台で、文字通り空前の数字といっていいだろう。企業の統合移転にともなう増床を背景とした都心回帰の動きなどがその理由に挙げられており、この流れはしばらく続くと見られている。募集賃料も緩やかながら上昇を続けており、実質賃料も上昇したとの見方が強い。

2020年のオリンピック開催地が東京に決まった際、不動産流通関係者の多くは暗然たる思いに沈んだ。今後、オリンピックに向け経済は必ず伸びる。しかしその伸びは2020年の夏までという期限がはっきりと明示されたもので、それ以降はどう楽観的に見ても上昇の理由が見つからなかったからである。2020年の夏以降、経済は停滞する。そんな見方がほとんどを占めていたように思う。かくいう筆者もその一人であった。

当時、ブローカーを中心とした不動産流通関係者の間では2018年が取引のヤマ場と見られていた。不動産価格はオリンピック直前まで上昇するかもしれないが、そこまで待っていては売り時を逃がす。おそらく2019年に入れば売りが増加する。すこし余裕をみて、2018年までの出口戦略を立てられる物件にだけ手を出そう、と。要するに、2018年を過ぎるとババを引いてしまうと見られていたのだ。

ところが、である。2018年も終わろうというのに、空室率の改善も賃料上昇も止まらない。企業の多くが過去最高益を続け、内部留保も過去最大。インバウンドも好調で、しかも大阪万博も決まった。少子高齢化にともなう人材不足については、働き方改革と外国人労働者の受け入れで対応するという。これでGDP成長率がもう少し伸びれば言うことなしだが、これはむしろGDP成長率に換算されないデジタルサービス分野の伸びが大きかったということなのかもしれない。

しかし、不動産全般が好調かというと決してそうではない。住宅分野では少なくない数の新築分譲マンションが空きをかかえたまま竣工しているし、賃貸の実質空室率は15%からさらに悪化しつつあるとも言われている。店舗物件では賃料上昇の天井が見えてきたという話も聞く。地方では相変わらず厳しい状況が続き、この好況もついに波及せず終わるのではとの声もある。そして、物流不動産はどうだろう。隆盛が続く大規模高機能型物流施設についても、供給過剰への懸念が大きくなってきている。建てられるうちに建てておきたい気持ちはわかるが、それで締まるのは自分の首だ。「2018年ヤマ場説」が外れ見通しが難しくなってきた今、ヤマ場を乗り越えられるか否かはいよいよ個々のプレイヤーの行動にかかってきた。そんな気がしている。

 

久保純一 2018.12.20