どこに成長の芽が見えているか − 第7回 政治と物流不動産『政権交代で何が変わるか』
企業の寿命は平均30年と言われ、商品のライフサイクルは年々早まって来ていると言う。昭和の大発明であったスーパーマーケッ トやコンビニエンスストアの成長も鈍化というか低迷を続けており、もしや寿命が尽きているのではないか。我が国の成長も鈍化とは呼ばずに、成熟とか次の段 階に来ているということでごまかしてきた。
政治変革55年を振り返ると、昭和30年から始まった年率8%以上の高度経済成長は平成7年、1955年のインターネット元年をピークに横ばい、底ばいを続けている。まさしく我が国のGNPもライフサイクルカーブを描き、商品サービスのS字曲線を描いている。
産業の転換期を迎えた企業は、大幅な事業の再編や商品サービスの交換を余儀なくされ、今までの常識や勝ちパターンを捨て去ってこそ「痛みを伴う再生」してきた。リベンジの代表はニンテンドウだろうし、かび臭さの全くないシルク・ドゥ・ソレイユ(太陽のサーカス)だろう。
さてひるがえって我が国を考えると、1968年前川日銀総裁レポート以来、使い古された「内需振興策による復活」が民主党のマニフェストにある。
これは今後もありえない。沸騰中国、アジアの台頭があって最近の上場企業の最高益が支えられており、今後も外需頼りの新産業にしか成長の芽はない だろう。GNPの60%を家計消費が支えている「お買い物中毒なワタシ」的日本人もさすがに買い控えが続いているが、少子高齢化や人口減少であっても新し いサービス産業の誕生には期待が持てる。
それは衣食住産業の延長ではなく、それは外需に期待して、感動と感激の新商品を世界に発信して行くべき使命を持たねばならないからだ。できなけれ ば欧州連合のように国境を廃止してEU連合となるように、アジアの国境も新通貨を生み出してのアジア連合しか道がない。制度的なEPA&FTAよ り国境廃止まで進めなくては利害調整が終わらない。
内需振興というキーワードは外圧対策であったからで、協調路線と韓国、EU諸国に見られる国防と外交政策による商業主義は国力誇示と産業成長を両立させてきている。
ノキア、サムスン、イケアなどに代表される諸国は貿易こそ成長の源という主張が明確である。対して我が国では外交政策の遺漏によって、ジャパン バッシングや金融ビッグバンの失敗が引き起こされてきた。その意味では民主党勝利の政治改革が大きな期待を持たれているわけだが、「政治主導、コンクリー トから人へ」などという政治変更を産業転換に言い換えていて、その実北欧型福祉社会実現への道のりも歩み始めていないジレンマが起きている。
新成長戦略では、曖昧な内需振興のことを環境、観光、医療介護と読み替えただけで、そこに成長の原動力は存在しないことは明確なのにである。
現代史の教科書にあるような資源なしの三国間貿易こそが我が国成長の種であり、向かう先が北米からアジア、EUへシフトしていると見ることがこれからの源泉になることは明らかである。
行き過ぎた品質と機能の高さをBOP(ボトムオブピラミッド、インド、アフリカ、後進国)地域に如何に展開して行くかが目指すべき企業戦略のあり方と写っている。
もはや主力基幹産業が鉄鋼自動車から移行しつつあることは明白であり、再びの成長産業は環境観光医療介護を伴いながら、圧倒的な低価格での衣食住産業を輸出させていくことにチャンスが見て取れる。
あなたの商品サービスを9割引で販路を求めるために何が必要か?
生産と販売、流通物流のしくみはどのように改革して確立出来るのか?
その模索がニンテンドウを代名詞したブルーオーシャンという競争なきマーケットの創造につながるだろう。物流の役割もコペルニクス的大転換が必要 なのだ。創業の地を離れた運輸、倉庫業を想像できるだろうか。支店、営業所ではなく本社機能を外地に置く度量はあるだろうか。コングロマリット化する物流 サービス産業が、真のグローバル化企業を支え続けて行くのである。商材の優位性があるなら、外地にリトルトウキョウ・ロジスティクスをもとめることが物流 企業の生き残り策である。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)