佐川急便▼電力データのAI活用で不在配送解消へ 
2020年07月17日
佐川急便は9日、AIを活用した不在配送解消に向けた実証実験を、神奈川・横須賀市で10月から開始すると発表した。
佐川急便、日本データサイエンス研究所、東京大学大学院 越塚登研究室・田中謙司研究室の3者で共同研究を進めてきたが、新たに横須賀市とグリッドデータバンク・ラボ有限責任事業組合が参画、5者による取組みとして、同日調印式を行った。
キーとなるインフラは電力検針業務の自動化を行う電力量計「スマートメーター」。電力消費データから荷受人の在・不在を判断することで、不在配達を回避した配達ルートを作成。これまで電力データの活用は電気事業法で一軒単位のデータは使えなかったが、6月の通常国会で電気事業法の一部改正が閣議決定。本人の同意を得ることで、スマートメーターに紐づく個人データを社会課題の解決に活用できることが決定した。
スマートメーターから現在の不在情報は把握できるものの、配達する時間帯の在・不在はAIが予測。不在宅を回避するルートをドライバーに提示し、不在配送の大幅な削減を狙う。
2018年9月に東京大学本郷キャンパス内で行われた実験では、AIが予測するルートで配送した結果、配送成功率は98%、不在配送の9割以上が削減されることが実証された。不在配送削減に伴う再配送が削減することで、移動距離は5%短縮された。
佐川急便の本村正秀社長は「物流業界の課題となるドライバー労働環境の改善をはじめ、走行距離改善によるCO2削減が期待できる画期的なソリューションだ。コロナウイルスの影響で、個人向けの荷物が年末の繁忙期並みに増加した。外出自粛、在宅勤務により、一時的に在宅率が向上し、たが、緊急事態宣言解除後の在宅率は低下していき、不在による在宅率低下が懸念されるようになってきた。電力データを有効活用して不在宅への配送回数が削減できれば、高い品質と安定した輸配送サービスが実現できる」と述べた。
実証実験は8月からモニタ募集を開始、10月から実証システム運用並びに試験配送を実施、12月をメドに効果確認、フィードバック収集を行う計画だ。改正電気事業法施行となる21年に実運用システムを構築、実運用稼働は22年となる予定。本村社長は「佐川だけでなく、物流業界全体で本システムの利用も検討していきたい」と展望した。