新エコ産業と物流 − 第4回 新経済成長戦略と物流不動産
次世代エネルギーソリューションとは石油資源からの決別といえるだろう。内燃機関から電気モーターへ、ボイラー発電からコー ジェネレーション、太陽光風力地熱発電。電力パイプラインから双方向ケーブルによる電気エネルギーの循環。ガスステーションから発電、電源ステーション。 家庭電源から公共エネルギースポット。エコエネルギーのすばらしさと経済的採算レベルの低さは両立できてはいない。しかし、社会使命や新たな価値観、法制 度や地球規模の道徳観からは経済性を超えた動機によって世界は動き始めた。
「私作る人、私使う人」というった両極をつないでいた経済性を新しい価値が行動を変えようとしている。安くて優れた消費活動から、循環と長期継続 性からの均等負担の思想は経済活動の視座を変える。誰もが地球という母を考え、次の世代に贈るべきギフトを生み出さなくてはならない。
経済性より持続可能な社会の実現に向けては新たな価値の認識が必要だ。所得より幸福、合理性より倫理と公器の証明が存在を保証する。物流にとって も迅速正確性より省エネ、社会影響を優先するようになる。しかも市街地に縦横無尽に走り回るトラックより、店舗と見間違うようなストックポイントが出現す るようになるだろう。配送よりも引き取り、販売よりもレンタル、消費よりも貸し借り、廃棄よりも再利用。今まで研究されてきたエコ物流が身近な町並みの中 に登場することになる。
乳母車での集配活動もメッセンジャーボーイの道具でなく、オフィスの必需品となるだろう。1階に位置するのは金融機関ではなく物流拠点に変わるはずだ。
郵便事業と物流事業、物販とレンタル拠点の合同営業が町並みを変えてゆく。高層住宅には生活資材が揃った欧米型レジデンスが住宅販売の新しいスタ イルとしてホテル並みの設備を揃えて登場する。大型店舗は劇場と見まがうほどの雑踏と音楽や歓声にあふれて、生活の楽しみを新しい体験として提供するだろ う。人が集い、住まうところに物流は欠かせない。個別配送から共同配送、トラックから人力。集配から引取りと持ち込み。物流のスタイルが変わることこそ街 の景観が変わってくる。
新しい物流機材、物流拠点、物流とビジネスの融合、オフィスではITと物流が主役を占める時代が始まろうとしているのだ。
資源を消費しない物流の姿には、常識を乗り越えた発想とデザインが欠かせない。在庫しない、包装しない、配送しない、物流のリ・デザインがエコ産業と共に物流の生き残りに必要な発想と視点なのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント・花房陵)