東日本復興構想会議で決まったこと − 第5回 クライシスマネジメントと物流対策
東京にある主要道路は環状線と東西南北に交差する大きな道路が特徴である。台東墨田江東の下町には、大きな公園がある。都会には緑がないという錯覚は、歴史庭園に立つと気づく。道路も公園も関東大震災、東京大空襲の復興策として計画された。
この度の東日本大震災では、流れてしまった街と産業をどのように復興させるかを文化や歴史から極めてゆこうというのが、復興構想会議の狙いだった。6月末に第1次答申が行われて決着した。内容は不十分で装飾語や概念に終始してしまっていた。
道路も公園も産業も見えてこない。
壊れた道路や鉄道、住宅や工場、公共施設や病院、学校は総額で16兆9000億円と試算確定したのは幸いだった。無くなった物は簿価か時価かははっきりし ないが、更地の草原にするわけもいかない。建築土木上下水道や設計家は大忙しである。がれき処分や自動車の買い替えに、人でも中古車も住宅も家電も全く足 りない。
今まで構造不況業種と言われた土木や建設、国の割引クーポン支援がなければ買い物客が居なかった自動車、住宅、家電量販店が、ゲーム盤のコーナーに居たために一気にオセロ黒白逆転している。
好況に十年続かず、不況に20年越えの日本にとって、無くなった物を作り直す復興需要は確実にあるが、その原資はどこか。
復興構想会議では、体面もあって防災の街づくりを示している。防げないから、減らすのだという子どもの言い訳のような「減災」設計で、堤防を二重化する という。津波が来たら非難できるように「非難タワー」を作るという。山に迫られた三陸地域では、住宅は高台へ、工場は非難タワーで凌ぐというのだ。
漁業と農業は特区制度で、株式会社化や共同所有を進める頓珍漢。1次産業の年収を知ってるか、平均年齢構成を調べたか、付加価値を認めないつもりか。
日本国民が東日本にキヅナを感じたのだから、広く浅く復興税という期限消費税で支えよと説教まで認めた。財政経済学を知らない文科系先生方の落第答案のようだ。
復興産業は土木建築インフラで、事業者そのものがすでに減ってしまっていたから一人当たりの仕事量が爆発している。自動車住宅家電は足りないから 増産だ。復興は10年続く建築事業だが、冬は寒い、台風も大雨も来るようになっているから、関西からの出稼ぎではシンドイ事業所になりそうである。
9月までに3次補正予算ができるらしいが、増税議論の理屈を詰めるだけだろう。国債増発と増税は、国民所得の再分配だから、後年度負担でもなんでもない。景気後退になるだけだ。日本は大消費国家なのだから、土木工事に金が行っても、買い物は増えない。
それより、マネーゲームで溜まりに溜まった外貨準備や外国債務を償還すべき時期だ。
ほっとけば、円高でさらに為替差損が数十兆円になるぞ。話題のアメリカ国際だけでも8000億ドル、時価64兆円、簿価は確か90兆円だったはず、どうする?
償還や売却で円が増える、ちょっとインフレになれば助かる。金利も上がらないから、買い物客が増えるぞ、なぜ財政経済学を広めようとしないのか?
だから、復興構想会議は解散させられたのだ。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房陵)