金融緩和施策と経済効果 − 第3回 経済政策用語解説
経済と金融はビジネスの両輪です。というのも、マクロ経済の公式ではY=C+Iで示されるからです。Y:国民所得、GNP、C:消費額、I:投資額、つまり経済は消費と投資であるということですから、デフレのような消費額が少ない時には投資を増やすようにして、結果的にGNPであるY:所得を増やすというのが公式です。
消費は給与や貯蓄からの取り崩しで行いますが、投資は同じように貯蓄や借り入れで行うわけです。そこで、借りやすくするためには金融政策が有効だと信じられてきました。
信じられてきた~、というのは訳があって、資金需要を増やすには金利を下げる=借りやすくする、という公式が頭に浮かぶのですが、金利はすでに1~2%程度まで、実質ゼロ金利が15年以上も続いているからです。
●リフレ派は金融業界寄りの立場を持つ
デフレ対策というのは、インフレ傾向への転換を言うのですが、最近の用語としてはリフレと言うのです。(リフレーション:デフレを脱してはいるが、インフレではない状態)そこで、最近の学派ではリフレ派という呼び方が流行っているのです。
金利が下がれば家を買いたい、という人も多いでしょうが、2%の金利でも投資意欲がなかったところに、さらに金融緩和とは一体どういうことになるのでしょう。実は、私たちの経済感覚では1%も2%もほとんど変わりがないように思いますが、巨額な資金を運用している機関投資家(投資事業で生計を立てている法人、個人)にとっては、1%の金利変更は大歓迎です。
ということで、金融緩和策を打ち出すかもしれない、というニュースは機関投資家にとって歓迎できる雰囲気です。そこで、為替相場や証券市場、不動産市況はビビッドに動いたのが最近の株高、円安傾向なのです。
Y=C+I という公式で示される実経済はどうかというと、「今までの15年も続いた、しかも昨年は一カ月で、数十兆円も円高対策に動いたのに」という反応がほとんどだと思います。
大切なことは、金融政策=現金の価値が下がる、ということで投資を急がせようというのが狙いなのですが、すでに繰り返されてきた金融緩和とどこが違うのか、という疑問視が多く聞こえてきます。
●物価上昇を許すのは、市場機能に手を加えること
物価上昇2%を目標とするという日銀政策(日銀は、銀行の銀行であり、物価の監視役という評価と役割がありますから)への期待は大きいものの、過去20年間で2%も物価が上昇した経験がなく、政策の実効性には疑問も多いのです。実際に2%目標には期限や成果保証がありません。
第183国会が半年開かれますが、その間の空気や党派の読み、イメージでの動向に機関投資家は歓迎するものの、実体経済への影響は限定的と言えるでしょう。輸出産業や国際為替では、すでに円安効果としての競争力が上がったり、先物で契約しているビジネスでは為替益が確実に出ていることは確かですので、上場企業の業績好転につながってはいるのです。
その反面、輸入品は原油を中心に値上がりして、ガソリン・ガス・電力・化成品は高騰しています。どっちが痛みが少ないか、企業か国民か、税収はどっちが負担してるんだっけ。
国の税収に占める割合は所得税33%、消費税25%、法人税20%です。国民の方が税負担大きいのにね。
さて、アベノミクス3本の矢では金融政策、財政出動(公共投資)、成長戦略(特定産業への規制緩和、事業支援)が同時進行中ではありますが、もっとも期待できる産業政策は成長分野への政策展開でしょう。すでに情報革命も進行しており、次の革命としては、感性革命、知財革命などと言われるようになってきていますが、成長戦略で期待される新産業はこのような革命的な価値創造と感動の提供が必要でしょう。
流通でもサービスでも、そして金融業界でも物流サービスを必要としており、物流業界としては荷主転換、つまりは次の成長する産業や荷主を見つけだすことに研究の必要がありそうです。
(イーソーコ総合研究所・主席コンサルタント 花房 陵)