運輸業の行政処分基準10月から強化▼最低賃金違反についての処分も創設 
2009年10月01日 【物流ウィークリーhttp://www.weekly-net.co.jp/】運輸業界向けの行政処分基準が10月から強化される見通しだ。これまで悪質事案に科せられていた事業停止7日間が「同14日間」に延長されるなど、運送現場にとって深刻な内容になっている。
ただ、処分強化の対象には社保未加入や最低賃金など事業者が自認できる違反がある一方、飲酒運転の下命・容認や指導・監督義務違反といった、どこまでを企業責任ととらえるべきかの判断が難しいものもある。
こうした実情を踏まえ、巡回監査に当たってきた関係者からは「企業としての姿勢を鮮明にするため、国交省告示(貨物自動車運送事業者が事業用自動車の運転者に対して行う指導及び監督の指針)にある『11項目』の再確認を急ぐ必要がある」と助言している。
10月から予定されている行政処分の強化は、これまで初違反で警告だった社保の一部未加入が10日車に、また全部未加入の再違反の場合は60日車から90日車に車両停止の期間を延長。最低賃金違反についての処分も創設され、一部に違反の事実があれば初違反でも10日車となる。
ただ、これらの項目は経営者自身が不適切な実態を把握できる立場にあるといえる。問題は、飲酒運転が絡んだ違反や事故について処分が一段と厳しくなる半面、出先でのドライバーの行動も含めて、どこまでやれば企業として監督責任を果たしていると見なされ、どんな場合が下命容認や監督義務違反とされるのかが判断しづらい点にある。
長年にわたって巡回監査に携わってきた関係者は「いくら現場で安全活動を徹底し、ドライバーにも繰り返して指導しているとしても、それだけで通用する時代ではなくなっている。もちろん日々の安全活動は不可欠だが、行政など外部から見て企業姿勢が『良』と判断されるには、運送経営者にとって『いまさら…』というレベルの安全指導と、それを実践している証しである書類の作成・保管にも取り組まないといけない」と指摘。そのうえで「最低でも11項目の再確認と、早期の実行が大切」とアドバイスする。
国交省告示の「一般的な指導・監督のポイント」として記されている11項目は「トラックを運転する場合の心構え」に始まり、「トラックの安全運行のために順守すべき基本的事項」「過積載の危険性」など基本項目が並ぶ。飲酒関連ではドライバーに、その危険性を科学的にも理解させるように求めている。
前出の関係者は「これらを一つずつ社内全体で再確認しながらクリアし、ドライバーが意識する活動に日常的に取り組んでいるという企業の姿勢が重要だ。仮に立ち入り監査があった場合、これらの地道な活動が与える印象は大きいというニュアンスを行政担当官の話からも感じている」と補足。「煩わしい作業として避けるのではなく、それが単に『違反イコール悪質企業』とされないための取り組みとしてとらえてもらいたい」と指摘する。
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