卸売業の流通改革 − 第6回 大きく変わる業種・産業界
日本のGNPは長い間500兆円を下回っていて、付加価値も売上も増えないと嘆くことはありません。毎年、150兆円ものお買い物が街で行われ、衣食住 その他の経費に家計は循環しています。シェアを争えば、まだまだあなたの企業には余裕があるわけです。競争の方法やルールを変えてゆきましょう。それこそ が、勝ち残りの残された方法なのです。
国が成長していれば、競争は緩やかです。互いに潤う程度の違いが、競争だったからです。今年の夏に発表された経済センサスでは、産業別の売上高は 1336兆円、卸小売業では415兆円の売上が計上されました。3年前の調査からは減少していますが、それは仕方のないことでしょう。
アベノミクスでこれから3年間の間に家計所得150万円アップを公約しました。給与や賃金、投資や預金の利息などの家計収入を増やすのが目的です。今、月々の家計所得は60万円ほどですから、約20%の余裕が生まれます。
「買い物をガマンしていた奥様には朗報」ですが、かたや消費税の増税が確定。電気ガス水道料金もガソリン代も上がる一方です。まず3%、次に5%の消費増税ですから、余裕は少し減ってしまいますが、その分競争に注力しなくてはなりません。
限られた消費支出のなかで、どうやって当社のシェアを高めてゆくのか。全ての企業が暗雲漂う中での試行錯誤を続けています。卸売業はメーカーと小売業を 取り持つ、販売代理店、購買代理店の双方の役割を担っています。メーカー視点、小売視点の複眼思考で取り組めば、それぞれより選択肢が増えます。
随分昔のことですが、ダイエーなどの大型小売業が流通革命と称して、価格破壊を始めた時、「問屋不要論」が盛んに言われました。
それは、「大手小売業にとっての購買代行なんていらない、メーカーから直接買い叩いて仕入れるから。」と考えられたからです。
ところがその後、卸売業は業界内部での再編や統合はありましたが、依然として販売代理、購買代理の役割はなくなっていません。
メーカーの代わりに販売する、小売店の代わりに仕入れる、という卸商売の本質を極めた機能がますます高度化してきているのです。その卸の基本機能とは、これから詳しく説明します。
それは、大手卸売業の物流センターであったり、店舗棚割りシステムなどのITツール、世界の良品を一手に集めてくるバイイングパワーであったかも知れません。
メーカーさんは、いつまでたっても「作りたいモノを安く、良い品質で」と願い、小売業は「より安く仕入れたものを適切な価格で売り切りたい」といつも願っています。
しかし、願いはいつも叶うものでなく、様々な障害と大きな壁にぶつかり、小売業の営業利益率は約束されたものよりも、遥かに低くなっています。
製造粗利30%、流通粗利10%、小売粗利40%、・・・と約束されていても、最終の経常利益率はどの業界も10%を下回ってしまうのは、何故でしょうか。
特に卸売業は、メーカー、小売業とは異なる特殊な機能を担っています。それは、卸の5大機能とも呼ばれていて、
・集荷、仕入れ、商品開発
・物流、流通支援、販売促進
・小売業への販売協力、売り場作り
・金融、与信供与
・マーケティング情報提供
メーカーにとっては販売代行、小売業にとっては購買・仕入れ代行を担うわけですから、頼りにしたい5つの機能です。
卸売業が多くのメーカーと取引を持つことは、メーカーにとって競合情報を収集していることになります。自社製品の性能比較、市場での評判や評価は、新製品開発には欠かせません。
そして、多くの業態の小売店との取引は、市場の大きな傾向や地域性におけるマーケティング情報の蓄積があることになります。小売業にとって、限られた在 庫商品を売り切るということが、最大の販売効率につながりますから、マーケットとマーケティング方法は絶対に欠かせないもの、安く仕入れるばかりが経営で はないのです。
このような基本機能に磨きを掛けて、強みとすれば良いのです。
改善は強化であって、弱点の補強ではありません。どちらがスピードを出せるか、どちらが顧客(メーカー、小売)にとって魅力的なのか、直ちに選択しなくてはなりません。
物流センター、物流情報システム、商品発掘力、店舗支援、マーケティング調査、提案能力、金融蓄積、時代の分析力など、強みに挙げられそうな要素は、本当に沢山あるはずなのです。選択と集中!というのは、選択肢の多い卸売業に与えられたキーワードだと思います。