法政大学▼歴史的建築物の活用セミナー、倉庫から池田浩大氏講演 
2010年01月19日 法政大学大学院で1月16日に開催されたセミナー「歴史的ストックの活用のいま」。セミナーでは、明治から昭和にかけて建てられた、歴史的にはまだまだ浅い建物の有効活用について講演・ディスカッションが行われた。
大学院の教室を使ったセミナーに、建築関係を中心に聴衆が集まった。
倉庫の活用では、トーウンの池田浩大代表取締役が講演。北海道・小樽の運河沿いの倉庫群や、横浜の赤レンガ倉庫など有名な施設を紹介した。「ウィキペディアには、倉庫の転用は難しいと書かれているが、そんなことはない」と池田氏。東京・芝浦でも倉庫をオフィスやショップに転用している事例を説明した。
「空間ビジネスとして倉庫には未来がある」と倉庫の活用を説明した池田浩大トーウン代表取締役
現在、芝浦は変わりつつある街だ。「昔は倉庫街で、人足の人が多く、怖いと言われていたという。今では住みたい街の上位に入る。新旧が入り混じった不思議な魅力がある」(池田氏)。
そういった都心立地にある倉庫は、空間が大きく自由に使えるのも嬉しい。床荷重もあり、さらに、普通のオフィスビルに比べ賃料は安い。芝浦は運河が通っており、水辺空間を利用できる。場合によっては船の係留権もあるといった、普通のビルにはない特典もついてくる。
倉庫の魅力を十分に発揮できず、有効活用の障害があるのも事実だ。建築から見て既存不適格なものや、図面・申請書などが保管されていないものも。工事期間と賃料発生時期の調整、25坪といった大きなスペースからしか貸せない。だからこそ池田氏は「(こういった障害を取り除ければ)倉庫はまだまだ可能性がある」とした。
法政大学大学院の教室の一室。セミナーというよりは、学校の講義のような和気藹々(あいあい)とした雰囲気。そんな中、倉庫以外にも、大正時代に建てられた鎌倉の洋館や、富山にある木造校舎の活用が説明された。
鎌倉の洋館は、現在ではコンサートや、パーティ、茶室、ウェディング、展示会などに利用されるイベント会場に。年間四千人の利用者があるという。
また、富山八尾町(現・富山市)の木造校舎は、アート展示場に変身。地元の理解を得られ、小学生の参加や、地域住民との意見交換といった、地域活性化にも繋がっている。
何百年も前の建物にはスポットを当てられる。明治~昭和の建物は、「中古品」といったイメージがあり、壊されてしまう。しかし、その価値を後世に残していかなければいけないものもある。セミナーの参加者からは、“「ビンテージ」建物ブームは近いうちに必ず来る”という強い思いを感じ取った。
最後は、司会者と講師全員が集まって、フリーディスカッション。講師間で質問も飛び交った。