運輸新聞 野田裕之編集長 − 記者に聞く 第3回 
―運輸新聞について聞かせてください
私どもは1920年(大正9年)、鉄道省(当時)の協力のもとに月刊誌「運輸」を発行したのが始まりです。したがって、今年で88年目を迎えまし た。現在は月・水・金の週3回発行しており、読者の55%が倉庫・輸送など物流事業者の方です。発行部数は45,700部で、海外にも発送しています。
インタビューに答える野田編集長
もともと日刊紙でしたので、「最も早く、物流に絡む動きをコンパクトに読みやすくお届けする」がモットーであり、これは週3回になっても変わりません。
現在は、「読みやすく」に重点を置いています。
というのは、物流と一口に言っても大変幅広く、例えば陸海空のうち、陸専門に勤められた方は「海空の世界は良く分からない」とおっしゃります。そこで、陸の方でも海空の実情を知ってもらうため、丁寧で分かりやすい記事づくりを心がけています。
―物流業界の現状や動向についてどうお考えでしょうか。
私が運輸新聞に入社したのが平成元年。当時は規制緩和の第一次の波が押し寄せ、翌平成2年には貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法(現貨物利用運送事業法)のいわゆる物流2法が成立しました。
まだ物流という言葉も世間に認識されておらず、運輸省(当時)も貨物流通という言葉を使っていました。
それが今では「ロジスティクス」となったり、かなり強引に「サプライチェーンマネジメント」に置き換えられたりされます。原材料の調達から製品の 最終消費地までの全過程を統制し、ロスをなくすという意味の「ロジスティクス」の精神は大事ですが、私個人は輸送・保管・荷役・包装・流通加工などの業務 を総合的に表す「物流」という言葉をもっと大切にしたいと考えています。
物流の現状ですが、やはり労働力・担い手不足を懸念しています。今や労働力不足は幹線・集配ドライバーや物流センター業務まで広がっています。ま た、物流経営者の後継者難も顕在化しており、例えばトラック業界では2006年度は前の年の1.5倍にあたる1,500社が事業から撤退しています。
何とか、もっと希望の光が射す業界にするため、私どもも努力していきたいと日夜考えています。
―物流不動産については、いかかでしょうか。
倉庫をはじめ物流業は装置産業であり、それをいかに効率良く運用するかは経営の重要課題です。特に3PLが転換期を迎えつつある昨今、新たな付加 価値型3PLビジネスを生む上で、物流不動産の知識・ノウハウはそれを持っているのといないのとでは大きな差が出るものと考えます。
総合物流効率化法という、従来の中小企業流通業務効率化法に代わる大変有効な法律が一昨年に施行されましたが、こうしたツールも活用しながら物流拠点を集約していくことは、物流産業にとっても、また新たな雇用を創出する観点からも重要なことだと思います。
イーソーコさんでは、空いた倉庫のリファイン(用途変換)も提案しているということですが、これは大変先駆的な取り組みだと思います。倉庫業だけでなく、トラック運送業からもこれから注目されていくでしょう。
―最後に、運輸新聞の今後を聞かせてください。
運輸新聞は今年で88年目を迎えるわけですが、やはり創立100年を視野に入れた取り組みをしていきたいと考えています。
私も中年の域に達し、「あと何年働けば」なんて後ろ向きに考えがちですが、むしろ12年後の物流業界はこうなるべきで、そのときの運輸新聞の役割はこうあるべきという、前向きな姿勢でいたいですね。
▼運輸新聞HP
http://www.unyu.co.jp/