物流不動産ニュース

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輸送経済新聞社 川嵜 勇・編集部副部長 − 記者に聞く 第4回 

川嵜 勇・編集部副部長

―東京工業大学という理系大学を卒業されていますが、物流業界に入ったきっかけは。

 大学は物流とは関係ありませんでした。記者になりたいと思い、この業界に飛び込みました。
 物流のことも知らなければ、取材の仕方、記事の書き方も分からない。一言で物流と言っても、陸運、倉庫、海運、空運で全く違う。国際を取材しようとすると、国ごとの違いも知っておかないといけない。はじめも今も、勉強の連続です。

 入社当時の編集部長には相当怒られました。今は、その怒られたことが生きていると感じるようになりました。怒られて成長するのは、物流に限らず他の業界でも同じことですね。

 記者になって痛感したのは、取材の仕方、記事の書き方に正解はないということです。正解がないのは、物流も同じ。物流のことを勉強しながら、記者として成長しているのかを確認する毎日です。

 ―陸・海・空運でそれぞれ物流の専門紙はありますが、「輸送経済」の特徴を教えてください。

 戦後の混乱期に、小難しい道路や物流関連の法改正があり、トラック屋の社長に分かりやすいように、情報を伝えたのが始まりです。新聞の創刊から60年を超えます。発行部数は8万部になります。

 「流通設計21」(雑誌)も出しております。発行部数は2万8千部。荷主と物流企業を結ぶ雑誌ということで、新聞と色分けをしています。

 弊社は、高度経済成長を支えた長距離輸送とともに歩んできました。中心は、路線トラックですが、区域や、倉庫、国際のニュースも扱っています。

 荷主が国際に進出し、トラック中心だった企業も、国際をやるようになりました。国際も含めた読みやすい記事の組み立てというのが必要になってくるでしょう。

 ―取材している会社は路線トラックが中心ですか。

 弊社の取材先は、路線トラックが中心ですが、私の取材先は多岐に渡っています。路線トラック会社にも行きますが、物流子会社、倉庫、海運、航空も担当しています。

 業界ごとで雰囲気も違いますし、情報も変わってきます。それが楽しいところでもありますね。

 ―物流業界の現状をどう捉えていますか。

 物流の中心となっているトラック業界は、運賃が低いままで、原油価格高騰の影響を直接、受けています。荷主との力関係で、なかなか運賃を上げてもらえないのが現状です。元請けと下請けの業界構造、規制緩和による事業者数の増加もあり、簡単には解決できません。

 海外のように一致団結してストするのも一手ですが、事業者数が多くて、まとまらないだろうとも言われています。日本の風土としてストを嫌がりますので、世論を巻き込まないと難しいのかもしれません。

 さらに人不足の問題もあります。長距離トラックのドライバーは、昔は給料も良かったみたいですが、今はそれほど高くなく、運転スキルぐらいしか得 られないというのがネックになっています。ドライバー不足は深刻で、外国人の活用といったことを真剣に考えないといけない状況になっています。

 ―そんななかで物流不動産はどのように写っているのでしょうか。

 外資系ファンドが入ってきて、大きく環境が変わってきたのは確かです。ファンドの建てる大型物流拠点によって、倉庫面積が膨れ上がり、単価の下落を招いています。

 しかし、マイナス面だけではないと思います。ちょうど3PL(サードパーティー・ロジスティクス)と言われるようになり、新しい物流モデルが登場しました。今まで自社で持つものと思っていた拠点の概念を壊し、3PLのニーズとあったのでしょう。

 3PLは、倉庫やトラックといった物流の小さい境界線もなくしました。

 大型拠点で、荷物を取られたという話を倉庫企業から聞くこともありますが、荷物を取ったのは、ファンド会社ではなく、拠点に入っている物流企業です。荷物を取られたのも、物流サービスの競争に負けたからとも取れます。

 ―今後はどうなっていくのでしょうか。

 今まで、物流拠点は、高速道路に近いなど、アクセスの優位性が重要視されてきました。しかし、人不足と言われるなか、どれだけのパートを集められるかという立地も重要になってきます。

 3PLをやっている企業からは、荷主との契約が一年単位になってきているという話も聞きます。ニーズも細かくなり、全てのニーズに対応できる拠点というものはなくなりました。

 そういった意味で、自社拠点の場合は、持っている拠点を何が何でも埋めないといけないですが、賃借ならニーズに合わせて移動することもできます。

 特に上場会社にとって資本を小さくすることは、ROA(純資産利益率)などの経営数値を改善することにもつながります。株価にも影響するため、物流不動産の活用は進んでいくのではないでしょうか。

 ―最後に、今後の輸送経済について。

 一部の荷主では、物流をコストだけで判断しなくなってきています。

 ある荷主は、東京の物流事業者の大半に連絡を取り、その中から有望な企業の拠点を見て、今の物流企業を選んだと言います。これだけ物流に本気になる荷主と物流企業の関係が、将来の普通の物流の姿になるように、記事を書いていきたいと思います。

▼輸送経済新聞社HP
http://www.yuso.co.jp/