株式会社日本新物流創造 真鍋 邦夫代表取締役会長(元・佐川急便社長) 松隈 由光代表取締役社長 − キーマンに聞く 第23回 
今年4月に千葉イーソーコ.comを開始した日本新物流創造。従来、顧客から問い合わせを受けると、提携会社のライフポーターが持つ浦安の倉庫で対応す ることが中心だった。しかし、スペックや立地の関係で、顧客の要望に対応できないこともしばしばだった。そんなときは、物流施設を探すこともあったが、手 に入る物件の情報数が少なかった。この状況は、同社の目指す「本気で社会に貢献できる新しい物流」を創り出すこととは離れたもの。千葉イーソーコ.com を開始し、物流不動産ビジネスを開始することで、新しい物流の創造を実現していく。
千葉イーソーコ.comと物流不動産ビジネスについて語る真鍋会長(右)と松隈社長
――松隈新社長就任と同時に、新しい物流不動産ビジネスを始めることに。
真鍋会長 松隈社長から物流不動産の報告を受けて、今までにないビジネスで、挑戦するだけの価値があると思った。日本新物流創造としても、社名の通り、「日本に新しい物流を創造する」柱のビジネスになると期待している。
松隈社長 物流不動産ビジネスを活用することで、ノンアセット型の物流を強化できるのがポイント。そこを強く 真鍋会長に説明した。今まで、アセット型が中心だったので、お互いを補完しあえるビジネスが展開できる。これからの物流は、アセット型、ノンアセット型の メリット、デメリットを把握し、適材適所で使っていくことにある。そのバランスをとることで、顧客に最適な物流を提案できる。
真鍋 当社が求めているのは、その先にある物流の“コンシェルジュ”という考え。ホテルの総合案内係、世話係 で使われる言葉だが、どんな事にでも応えてくれる人だ。現在の物流業界のサービスはそこまで達していない。物流は社会のインフラとして重要なポジションに あると言っているのに、対応できるサービスになっていないのが歯がゆい。そのため、当社は物流に関する疑問や相談を顧客から受けて、適切な物流を提案でき る会社でありたい。アセット型で、物流の現場に関するノウハウがあり、物流不動産ビジネスで、物流施設に関する情報を持つことができる。この2つを組み合 わせて、物流のコンシェルジュとして、どんな事にでも応えられる企業になるだろう。
松隈 今まで、当社では、顧客の希望にあわせていろいろな商品を扱ってきた。パソコン関係や自動車の部品メー カー、通販、アパレルなどだ。BtoBの企業物流も、BtoCの消費者物流も、両方対応できるノウハウを持っている。ただし、確かにそれだけでは真鍋会長 の言う物流コンシェルジュとは言えない。BtoB、BtoCのノウハウを融合して、新たなサービスを提供することも大事。また、物流不動産ビジネスを活用 し、現在の浦安の倉庫という枠を越えた提案ができる。それで、初めて物流コンシェルジュと名乗っていけるようにしたい。
真鍋 物流コンシェルジュに向けて、不動産の知識・ノウハウが入ったのは大きい。当社には、顧客の情報は入っ てきていたが、それに対応する物件情報がなかった。マッチングはやりたかったが、一から体制を構築するのには時間と労力がかかる。それが千葉イーソー コ.comを開始し、一気に短縮できたと思っている。松隈社長自信、研修を受けてどう感じたか?
松隈 物流の経験があるから、倉庫の図面と立地だけでどんなものに合うのかというセールス文章はすぐに浮か ぶ。ただ、物流不動産の研修を受けて、新しい発見もあった。今まで物流施設を借りるときは、自社で設備投資をしないといけないと思い込んでいた。しかし、 交渉の仕方で、オーナーが投資をしてくれることもあるということを知った。今までは物流を受ける観点しかなかったが、物流不動産をやると、不動産の収益も 考えられるようになる。顧客にあわせて、多角的な提案ができるのが面白い。当社でやっている、通販向けの物流サポートサイト「スマートECサポート」との 連携で、ビジネスは大きく広がるだろう。
真鍋 それが、物流コンシェルジュとして、お客様にも、オーナー様にも、当社にもプラスになるビジネスを提案することになるだろう。誰かが一人勝つビジネスは、長くもたない。三方良しの物流サービスを提案していく。
――3月11日の地震で、災害地支援という面でも物流は注目をあびた。
真鍋 3月11日の地震は、物流にも大きく影響している。東北に到着した救援物資輸送が、なかなかうまくいっ ていないという情報も。物流のプロとしては歯がゆいことが多い。佐川にいたとき、阪神・淡路大震災の救援物資の仕分け・配送を担当させてもらった。溢れて いた救援物資を、各避難所の要望を整理し、分配していった。こういったところで物流のプロとしての力を発揮したい。物流が握るキーポイントは大きく地域に 密着した物流の付加価値をもっとあげていきたい。
松隈 当社でも、救援物資の対応をさせてもらっている。また、今回の件で、災害時の物流を見直す動きが出てき ている。ある拠点が被災しても大丈夫なように、複数拠点化が進みそうだ。イーソーコ本道のネットワークを生かし、物流としての提案と、物流不動産ビジネス としての提案の両方ができるだろう。
真鍋 新社長就任で、新ビジネスを開始。地震の対応と、いろいろと忙しい一年の始まりとなった。それでも松隈新社長は判断力、実行力があるので、期待している。
松隈 物流不動産ビジネスは、当社のビジネスの柱にすると気合を入れている。ただ、その気合が空回りしないこ とに気をつけたい。今、社長として仕事ができるのも、自分の力というよりは、周囲のバックアップがあったからこそ。これは、物流不動産でも同じ。ひとりで 全部を決めてこようとは思わずに、いろいろな専門家の力を借りて、成約をしていきたい。