坂巻 健太 国交省・大臣官房参事官インタビュー▼物効法認定数、堅調に 倉庫税制延長 
2014年11月19日昨年度来、物流総合効率化法の認定施設が増えている。日本倉庫協会らの普及活動により、税制や開発許可などのメリットが事業者に広く知られるようになったからだ。物効法の認定件数は今年度で期限を迎える倉庫税制の延長にも影響する。国土交通省の坂巻健太大臣官房参事官は「(同法認定を通じ)施設を大型化することで物流効率を高め、ドライバー不足など問題解決につなげたい」と意気込む。
――倉庫業界の経営環境をどう見る。
坂巻 普通倉庫21社統計によると、入庫高は昨年7月から約1年間、前年同月を上回る水準で推移。保管残高も5年4カ月ぶりに約500万トンに迫った。一方、直近の統計では入庫高が久々に前年を下回るなど景気の調整局面に入っている可能性もある。今後も動向を注視していく。
――7月の参事官就任から3カ月がたった。
坂巻 現場を視察し、倉庫は物流の要と感じている。地域に根差し雇用を支える公共性の高い産業でもある。物流業界でドライバー不足が顕在化する中、施設の大型化による輸送効率の向上、荷待ち問題の解決など倉庫が果たす役割は大きい。
日倉協らの努力で周知拡大
――課題解決には物効法の認定数増加が鍵に。
坂巻 平成17年の施行からことし9月までの総認定数は236件。昨年度は新たに34件を認定し、過去最高水準に戻りつつある。今年度上期(4~9月)は前年同期を5件上回る15件を認定。物効法取得の機運が高まっている。
――増加の背景は。
坂巻 日倉協と運輸局による官民挙げた普及活動が実を結び、税制措置や開発許可といった物効法の取得メリットが事業者の間に広がりつつある。最近は市街化調整区域での倉庫建設を進めることで、雇用創出や地域活性化につなげようとする自治体も全国的に増えている。
今後はより大型施設に誘導
――認定数増加は今年度期限切れとなる倉庫税制延長に弾みをつける。
坂巻 認定施設に法人税の割増し償却などを行う倉庫税制の延長は重要施策の1つ。今回も厳しい折衝が予想されるが、物効法認定件数の増加を説明材料にしたい。来年度以降は認定要件を大型施設に絞り、より政策効果の高い施策に誘導する。
――2年前の防災機能に続き、物効法の認定要件が高まる。
坂巻 来年度から認定要件の施設規模を引き上げるのは、ドライバー不足に対応できる施設を造るため。輸送効率を高めるには施設を大型化することが必要。一方、物効法の施行から間もなく10年が経つ。業界の意見を聞きながら、必要に応じた見直しを検討したい。
保管協定は広島災害で活躍
――3年前の東日本大震災以来、災害対応も重要テーマ。
坂巻 都道府県と倉庫協会が結ぶ保管協定の締結は、昨年度末時点で28件。震災前の9件から大幅に増えた。ただ関東、北陸信越、近畿運輸局管内の締結率が100%なのに対し、思うように件数が伸びないエリアもある。国交省が引き続き仲介役となり、早期締結を進めたい。
――なぜ締結を急ぐ。
坂巻 8月に広島で起きた土砂災害では、倉庫協会も県と結んだ保管協定に基づき支援物流を展開。県内の大型物流センターで飲料水の保管業務を行うことができた。大規模災害はいつ起こるか分からないからこそ、準備を早める必要がある。
――自治体、事業者らの連携が重要になる。
坂巻 昨年度から災害物流研修を開くなど自治体の防災担当者、物流事業者、行政の連携を強化する取り組みを進めている。また今年度にはBCP(事業継続計画)策定のガイドラインもまとめる。現在は荷主、事業者が独自にBCPをつくっているが、カバーできていない部分もある。両者の連携をより深められるよう支援していく。
(経歴)
坂巻 健太氏(さかまき・けんた) 昭和44年12月10日生まれ、44歳。愛知県出身。平成4年京大経卒、運輸省(現・国土交通省)入省、20年新潟県産業労働観光部観光局長、24年第10管区海上保安本部総務部長などを経て、26年7月大臣官房参事官に就任。
【 輸送経済新聞社 http://www.yuso.co.jp 】