ディレギュレーション:規制緩和 - 第2回  物流改革大全
物流業界が強制的に変革を求められたのは、規制産業の枠を外された時でしょう。守られてきた産業から、外洋に放り出された衝撃があったはずです。運輸業にとっての規制=保護は、40年の時を経て開放されたのです。
■運輸二法
「貨物運送取扱事業法」「貨物自動車運送事業法」が平成に改革されました。自由競争と適者生存の理を阻害するものとして、レーガン大統領が始めたディ・レギュレーション(規制緩和)が日本にも及んできたのです。その狙いは、産業自体の効率化と料金・コストの低減によって顧客や社会の利便性を高めるものです。
規制緩和の目的が公共性ですから、すべては受け入れざるを得ません。激しい料金競争が当然予想され、事実上の競争が始まりました。備えるために自社を鍛え直すこと、これが運送業に求められた改革の後押しだったのです。改革が先か、競争力強化が先か。いずれにせよ、規制緩和によってトラック運送事業者は一気に新規参入を図ってきました。競合が急激に膨れ上がる事態は予想していませんでしたから、競争は厳しいものでした。
■区域制限解放
規制緩和が急激な競争を招いた理由は、運送事業免許の取得が容易となり、義務や制限が大幅に軽減されたからです。規制緩和という政策が急激な自由競争を招くことは、日本より前のアメリカ事例を見て承知済みのことでした。
今までの産業規制は、言わば競争制限にあり、しかも存続保証でもあったのです。立ち上がりの時期の産業を育成するための政策として、競争を避け収支を安定させるために料金規定を設けていたのです。
それが同時に外されたわけですから、繁忙期の下請け仕事としてのトラックGUYがピカピカの新会社社長になるのは容易でした。顧客さえ入れば、トラックの手当は脱サララーメン店より容易にスタートアップできたからです。
■規制緩和を追い風に
コンプライアンス経営が言われて久しいのですが、その実、どんな法令・法規が自社の事業活動に関係しているかを全方位で把握することは難しいのです。法令でなくとも、関係省庁からの指導やルールを厳密に守ることは当然としても、規制緩和、法令改正に伴う事業転換の戦略性は改革の手段として重要です。
特に、地域限定だった運送免許の開放は、営業所を全国に展開するチャンスとなりました。貨物や商品の生産地、製造地、販売地というエリアをまたいで輸送サービスや物流サービスを展開可能となった規制緩和は、まさに製販一体のロジスティクス実現のチャンスでした。その後登場してくる3PLの根拠は、調達~製造~販売の物流を一手に受けられる、規模拡大の契機となったのです。
■行政は規制緩和をする。そして新たな規制を作る。
司法、立法、行政という政治活動は時代に合わせて法整備を行い、時に開放、時に引き締めを行います。チャンスを活かすも殺すも規制緩和を知ることこにあるのです。医薬品の通販事業、食品の賞味期限や原産地表示などの生活関連規制が開放されると、一気にメーカー~流通業が活況を迎えます。
様々な業界とパートナーシップを組めるのが、物流業の強みですから、異業種、他業種、経済全体での規制緩和に敏感でなければ、改革スタートのチャンスをも見失ってしまうのです。
(イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵)