物流の業態転換 - 第10回 物流改革大全
物流は製造業、流通業が自らの活動として行うものと業として行うものに分かれます。実体経済には欠かせない活動ですから、自営とアウトソーシング双方に意義があります。問題は物流業界が過当競争に陥り、好転の兆しが見えず更には人手不足で運営自体に危機があるのです。物流業種とは輸送と保管、作業のメニューを指します。業態とはその売り方の違いです。単価で売ろうとするから、運賃も保管料も価格競争になるのです。3PLという総合サービスでさえも料金表が単価になっていますから、物流業態の転換といえども誰もまだ発明してはいないのです。
ところが、荷主企業や物流を利用する側にとって、物流活動は事業の一部でしかありません。物流業者の事業は物流を売ることですが、売り方を変えるところまでには至っていません。そこに、経営改革とチャンスはあります。
取扱う商品や配送する商品の通過額に対するフィー制度料金というものがありますが、これは業態の1つでしょう。物流原価が合うか合わないかの問題でフィー制度が取り上げられることがありますが、利用側にとって見ればとても使いやすい制度です。しかも、物流コストを売上の変動費として捉えることができるからです。
どうしても必要なコストなら、変動費にしたいのは当然です。そこに着目した優れた方法です。フィー率の妥当性が公取委からも指摘されていますが、物流原価を積み上げれば計算は可能だし、料率の交渉は平等であるから、これからも利用され続けるでしょう。
製造の代行、販売の代行に物流を加えれば、製造原価や販売手数料の中に物流原価を織り込むことが可能です。これもまだ、陽の目を見ませんがまもなく登場するでしょう。
小売業界は新商品開発に膨大なエネルギーを投入して開発を行いますが、すぐさま模倣されて陳腐化が始まり、コモデティ化してしまいます。だから売るものは常に足りません。専門店に特化した小売業は店舗や通販、オーダーメイドなどの売り方を変えてゆきますから、顧客に合わせた進化にエネルギーを投入します。そして、見返りもしっかりあるので強含みです。
製造業も同様に量産化したものは短命です。どちらに商機があるのでしょう。
物流サービスも同じようにコモデティ化(標準サービス)を避ける方法があるはずです。しかも、利用者側に物流を意識させない方法すら発明することも可能です。
例えば、GEやロールスルイスが手がけるジェットエンジンの稼働時間に応じた料金制度は、製造業が保守メンテというサービスと交換部品の物流をセットにした、設備リース契約型のビジネスになっています。ITのモニタリング機能を標準サービスに取り入れ、実稼働の保証サービスを料金化しています。
富士ゼロックスの高速プリンターやオフィスコピーの集中管理も同様な契約でサービスを提供していますし、印刷部門の要員は駐在してデスクオフィスを構えています。コピー用紙やトナーの注文や在庫保管の問題は顧客には無いものとなっています。
物流はその利用者にとって見れば、わずかな手段であって事業の一部でしかありません。であるからこそ、物流企業はその荷主にとっての総合サプライヤーとして製造や販売をフルサポートすることが新業態になります。取扱う商材に専門性を高めて、作ること、売ること、売った後のサポートまでも一貫して行うなら、初めて総合物流サービスの名前が活きると言うものです。
業種から業態へ、かつての小売業が商店街から抜け出し、大型化して、さらに専門化してきた小売の業態は、ECという武器を手に入れてコンビニやネット通販まで広がってきました。
物流業界もそろそろ価格競争からサービス強化競争へ向かう時期に来ているのだと思います。
(イーソーコ総合研究所 主席コンサルタント 花房 陵)