物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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タカとユージと、四日市で - 129 

最近の人はあまり知らないかもしれない、といったら制作している方に怒られそうだが、今から30年ほど前、「あぶない刑事」というテレビドラマが放映されていた。当時の刑事ドラマといえば派手なカーチェイスに銃撃戦が売りだが、このドラマはそれに加えてスタイリッシュかつコミカルな演出が他の刑事ドラマとは一線を画していた。物語の舞台である横浜の港町らしい景色やファッショナブルな雰囲気も人気の理由に挙げられることが多いが、毎週ブラウン管(ブラウン管である)にくぎ付けとなっていた私としては、そこに登場した多くの「倉庫」も付け加えておきたい。

当時の横浜は今よりも港町の雰囲気が色濃く残り、海岸沿いには多くの倉庫が並んでいた。昼なお暗く人の近寄らないそこは犯罪者のアジトであり、追い詰められた容疑者が立てこもる最後の砦であり、犯人を追う刑事たちが迷い込む迷宮であったのだ。こう書くと倉庫のオーナーから叱られそうだが、私にはそれがむしろ倉庫の魅力として映った。何か秘密が隠されていそうな雰囲気は、当時の倉庫が持っていた独特の格好よさのひとつなのではないだろうか。

ドラマの人気は放映が終わってからも衰えず、数年おきに映画がつくられ続けてきたが、来年にはついにシリーズ最終作となる映画が公開される。お決まりの倉庫のシーンもあるようだが、そのロケの一部は四日市で行われたという。確かに横浜は相次ぐ再開発で様変わりし、犯罪者が犯罪欲をそそられそうな倉庫などは見かけなくなった。もはや横浜は、古い倉庫が立ち並ぶ港町ではない。最近は、そんな“明るくて綺麗”になった横浜も絵になるのにと思ったり、やっぱりタカとユージが犯人を追いつめるのは昔ながらの倉庫でなきゃ、と思ったりしている。

ちょっと古くて薄暗い倉庫を見るたびに、扉を開けたらあのころの横浜につながっているような、そんな想像をしてしまうのは相変わらずだが。

(久保純一)2015.12.05