日本物流不動産評価機構▼7月31日開催の記念講演セミナー概要 
2007年08月16日 日本物流不動産評価機構(望月光政委員長=日通不動産常務取締役、JA-LPA)の賛助組織として設立された日本物流不動産評価機構推進協議会が、発足1周年を迎え、記念講演セミナーが7月31日、東京都千代田区のベルサール九段で開催。324名の参加者で賑わった。
ここでは、まず望月光政委員長が挨拶。「JA-LPAでは、物流不動産の適正な鑑定評価基準作成に向けた取組みとともに、『(物流施設を人間にたとえれば)人間ドックのみならず、体力測定を行う場としての機能を果たすべく』物流不動産に関わる法的・経済的・物的なコンサルタント、物流不動産に特化したPM・FM・CM業務など、さまざまな活動を推進している。JA-LPAの賛助組織として設立された非営利団体であるJA-LPA推進協議会では、今回の1周年を機に飛躍を図るべく、メルマガの作成、視察旅行の実施、勉強会・分科会の実施などを展開していきたい」と語った。
その後は国土交通省政策統括官・物流施設参事官の河野春彦氏による「倉庫業を取り巻く状況と施策展開」、イーソーコ総合研究所の花房陵・主席コンサルタントによる「物流不動産の流通マーケティング-倉庫営業の新手法」、J&Kロジスティクスの原瑞穂社長による「アジアの物流動向と日本の物流の変化」、紙中コンサルティングの紙中英伸氏による「変革する物流業界と物流不動産」の4テーマによる講演が行われた。
それぞれの講演要旨は次のとおり。
●国交省・河野春彦参事官
「資産のオフバランス化への志向、物流不動産ファンドの拡大や不動産証券化の進展が、物流施設の『所有と利用の分離』を進ませる要因となり、大規模施設の提供が相次いでいる。そうした状況のなか、物流施設は、ほかの不動産と違って、適正な評価が構築されていない。施設所有者・荷主・物流事業者・投資家など、さまざまなプレイヤーがいるなかで、お互いが納得できる共通の尺度をつくるべきだろう。その意味で公正・客観的な評価をつくるべく活動している日本物流不動産評価機構の今後の活動に期待したい」と語った。
●イーソーコ総合研究所・花房陵・主席コンサルタント
日本物流不動産評価機構メンバーのイーソーコの活動紹介を交えながら、従来、物流営業に問われていた「情実」「KKD(経験・勘・度胸)」の要素が、通じなくなっていることが語られた。その上で「人」「物」「金」ではなく、「情報」「不動産」の第4、第5の資産を活用したビジネスを展開していく重要性を示唆した。
活動紹介事例としてあげられたイーソーコの取り組み内容は次のとおり。
「空き倉庫検索サイトの『e-sohko.com』(全国35サイト、常時約8000件以上の物件情報を掲載)を活用した、マーケティング営業を実施。複数の営業マンによるフォローアップ体制、内外の専門家集団・エキスパートグループ(建築・物流・金融・不動産)の活用を図ったきめ細かい営業を実施している。さらにイーソーコでは新事業として、収益向上を図るためにスクラップ&ビルドにとどまらず、現状ある倉庫の強固な躯体・床荷重・天井高・柱間隔のある大空間を活かし、マーケットニーズに適した必要最小限の建築物へ用途変更リニューアルを図り、資産価値・収益率の向上を図る「倉庫リファイン」を展開。さまざまな分野で『物流不動産ビジネス』に寄与している」と語った。
●J&Kロジスティクス・原瑞穂社長
「生産拠点の海外移転が図られるなか、東アジアの物流が大きく様変わりをし、韓国では国全体の物流機能向上、海外諸国の誘致を目的とした物流富国政策が行われている。釜山新港では海外からの誘致を図るべく税・土地使用料の軽減など、積極的なインセンティブを行っており、これを受けて、日本から三井物産、日本郵船、福岡運輸など18社が投資している。北海道・東北・北陸・九州・四国などでは、東京・大阪港の主要港ルートを通じた輸送ではなく、釜山-地方港を活用することで、物流コスト(海上運賃が割高となるが、国内輸送費・保管費の削減で全体のコストが削減される)が軽減される。そのため、さまざまな企業が、釜山を活用したルートを使っている」と語った。
●紙中コンサルティングの紙中英伸氏
「従来の倉庫業から物流不動産業へと、業務の枠が拡大しているなか、物流拠点の特徴・機能を公正に判断し、基準を策定する必要性が高まっている。JA-LPAでは、レーダーチャート、評点などを活用しながら、できるだけわかりやすい形で評価を行おうと務めている。老朽化施設やアスベストなど不適格物件をできるだけ排除し、今後、ますます物流不動産分野における投資機運が高まるように、私も協議会員としての立場からJA-LPAに協力していきたい」と語った。
セミナー開催時の模様
http://file.e-sohko.com/eigyo/e-sohko/it/ja-lpa/seminar-report.pdf
※日本物流不動産評価機構(JA-LPA)は2005年9月、イーソーコ、日通不動産、日本政策投資銀行、日通総研、帝国データバンクなど物流・建築・不動産・金融の専門家が集まり、第三者の中立的な立場から物流施設の評価や診断を行う組織として設立。日本物流不動産評価機構推進協議会はJA-LPAの設立に賛同頂いた企業や有識者からなる団体として昨年設立。非営利団体で、広く会員を集め、会員の相互交流による勉強会や研究会によって、物流関連事業の発展と物流不動産評価体系の確立をめざしている。