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アメリカ物流トレンド見聞 その6「韓進海運破産の影響」 - 158 

韓国の韓進(ハンジン)海運が破産申請を出した。

少し前から韓国の2大船社、現代(ヒュンダイ)商船と韓進海運の財務状況の危うさはささやかれていた。そんな中、経営破たん回避策として、この2社の合併についても噂されていたが、巨大財閥のプライドからか、ライバルとの合併に応じることはなかった。

この結果、80隻以上ものコンテナ船が世界中の港の沖で、貨物を搭載したままプカプカ浮いて接岸待ちだという。コンテナ船が港に接岸する際はターミナルハンドリングチャージ(THC)や荷役料を船社が港に払うわけだが、払えないので、接岸を誘導するボートも出ない状況。さらに1.4兆円を超える賠償金が発生するのでは、とみられている。

その影響は世界規模で拡がりつつある。例えばアメリカのWalmartも韓進の船を使っているそうで、ハロウィンやクリスマス商戦にも影を落としそうだ。アメリカ向けではとりあえず4隻が荷卸しを認められることに決まったが、この荷役料等の費用だけでも10億円に上るという。恐らく販売機会損失による更なる影響、賠償請求を回避するためだろう。

この状況、コンテナ船が余っている現在の状況が続けば、他の船社でも起こりうることだ。そもそもそこまで巨大なコンテナ船が必要だろうか。それほど世界の貨物は増えているのだろうか。10年前と比べて、コンテナ船の全体キャパは2倍に増えている。現在最大級のコンテナ船は19,000TEU(20Fコンテナx19000個)も積める。

10年前と比べて、世界中の貨物容量は2倍も増えているだろうか?

 

コンテナ船が増えた主な原因の一つが中国経済の成長だ。中国が成長著しい時期に多くの船社がこぞって大型コンテナ船を発注したわけだが、完成には2₋3年はかかり、就航時には供給過剰。その結果、船腹の安売りが激化し、各船社の財務状況が悪化した。

一時期、「ゼロフレイト」なるものが話題になったこともあった。「港使用料の半分でももらえれば、運賃はタダでいい。」というものだ。コンテナを空で運んだら、運賃収入はゼロで、THCや荷役料を支払わなければならない。だから、せめてTHCの一部でももらえればマシといったところである。

各船社独自で営業をかけて船腹を全て埋めるのには限界がある。以前から3-4社によってアライアンスを組むことは行われていたが、さらに船社数を増やした共配を加速させる動きが出つつある。元々船社によって寄港地やルートが異なってきたが、これが更に加速すると、どの船社にBookingしても同じルートのサービスを受けられることになり、結局安い船社にBookingが集まる。これでは更なる価格競争に陥りかねない。そう考えれば、例えば日中間のみとか日韓間のみといったスピーディな地域限定型の中規模船社が意外と残るのかもしれない。当然貨物量の絶対量はメガキャリアと比べれば少ないため、規模は大きくはならない。

昨今では燃費削減のために船の速度を半分にしたりしている。海上運賃がほぼ底を打っているにも関わらず、アライアンスの大型化によってさらに下がりかねない。儲けを出すためにはさらなる運航コストの引き下げしかない。絞った雑巾をさらに絞るようなものかも知れないが、船そのものを変えればまだ余地はあるのではないだろうか。思いつきだが、例えばコンテナ船や海上コンテナに炭素繊維を使うことで船の軽量化を図れないだろうか。荒い荷役や海洋環境に耐えられるかといった課題はあるだろうが、船が軽くなれば燃費効率が向上し速度も出せる。速く、しかも安く運べるとなれば、今の海運業界を変える可能性もある。炭素繊維といえば日本のお家芸ともいえる技術。海運業界、そして日本の産業界の1ソリューションにならないだろうか。

(日本物流不動産株式会社  代表取締役 池田晃一郎)2016.09.20

 

日本物流不動産株式会社:平成25年設立。倉庫賃貸をはじめ、倉庫や事務所等の商業用不動産の仲介、外国人向け物件紹介サイトの運営が主業。物流業務に役立つ「物流不動産英語塾」や高品質なメイドインジャパンのアジア向けEコマース事業も展開中。

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