物流不動産ニュース

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物流業が誇れるもの - 103 

少し前の話になるが、トヨタが「カイゼン」を「寄付」して話題になったことがある。

ご存知のとおり、カイゼンとはトヨタ流の業務効率化手法。生産効率を上げるにはどうすればいいか、収益力を上げるにはどうすればいいか、品質をさらに向上させるためにはどうすればいいかなど、常に改善点とその実現策を模索し実行していくことでより良い製品を生み出すという考え方だ。製造業のみならずあらゆる業種において効果を生む手法として、昨今では海外の企業でも多く採り入れられている。

これを「寄付」されたのは、アメリカの「フード・バンク」。外装に傷がつくなどして商品としての流通が困難になった食品を生活困窮者や被災者に配布する取り組みで、年間150万人ほどに食料が供給されているという。

2012年、ニューヨークで発生したハリケーン災害の際にもフード・バンクが活用されたが、少ない数のボランティアだけでは十分に機能しなかったようだ。そこでトヨタが行ったのが、「業務効率=カイゼン」の寄付。すなわちトヨタのスタッフによる業務効率化のシステム構築と指導だ。

まず食料を入れる箱のサイズを適正化し、トラック1台に積める箱の数を864個から1260個に増大。箱詰めにかかる時間は流れ作業を導入して1箱あたり3分から1分に短縮。さらに受け渡し作業の効率化を図り、3時間かかっていた配布時間は1.2時間に短縮されたという。得意分野を活かした、いかにもトヨタらしい寄付の仕方といっていい。しかしこれらの手法は、物流の現場ではあたりまえのことばかりなのに、読者のみなさんはすでにお気づきだろう。

日本の物流業者は、日々カイゼンの努力を続けている点でトヨタに劣るところはないだろう。しかしそれを価値として社会に貢献するという意識についてはどうだろうか。阪神・淡路大震災から20年。物流業はいつでも復興の先頭に立つことができるという意識を、常に忘れずにいたい。

(久保純一)