ネットで伝わるもの、伝わらないもの - 104 
不動産で当たり前のように使われる言葉に、「重要事項説明」というものがある。物流業でも、倉庫を貸したり借りたりしたことがある方はご存じかもしれない。要するに契約内容や物件の状態などの詳しい説明で、不動産を売買あるいは賃貸する合意を得るために欠かせないものなのである。この説明を、ネット上でできるようにしようという動きがある。
近年あらゆるものがネット取引で手に入るようになったが、不動産は唯一といっていい例外。その理由が、前記の重要事項説明は基本的に対面で行わなければならないとされているためだが、国土交通省は昨年4月、不動産流通にもITを取り入れようと「ITを活用した重要事項説明等のあり方に係る検討会」を設置。対面以外の方法による重要事項説明の実現に向けた検討をはじめた。今年1月には「最終とりまとめ」として意見がまとめられたが、これも将来的に不動産のネット取引を可能するための地ならしという見方が強い。実際に、不動産業界ではネット取引解禁を見越した動きもでてきている。
不動産業以外には関係ないと思われるかも知れないが、実はこれ、不動産流通のあり方を根本から変える可能性を持った施策なのである。例えていえば、本やDVDを注文するのと同じように、家や土地をネットで注文して買うこともできてしまうかもしれないのだ。いずれは、見ず知らずの人に倉庫を貸す、見ず知らずの相手から倉庫を買うということが当たり前になるのかもしれない。
国土交通省の資料によれば、対面での重要事項説明にかかる時間は売買で1時間半から3時間、賃貸で30分から1時間が目安という。ネット化に反対するわけではないが、この時間には重要な意味が込められていた気がするといったら後ろ向きすぎるだろうか。