物流不動産ニュース

物流、物流不動産、倉庫を網羅した
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残念ながら、リノベーションは万能ではありません - 121 

物流不動産ビジネスにおける空き倉庫の活用、などという話題を持ち出すと「倉庫をリノベーションして賃貸するやつでしょう」という反応が返ってくることが多くなった。倉庫のリノベーションを積極的に進めてきたイーソーコグループとしては、その有用性が物流業・倉庫業にも浸透しつつあるのは嬉しいかぎりだ。しかしリノベーションとは本来、既存のストラクチャやシステムに手を加えて新たな価値を付加し、再活性化させることをいう。不動産や建築では単なる改修までもリノベーションと呼ぶことがあるが、これは真の意味でのリノベーションではない。新たな機能が付加され、それによって従前にはなかった価値が見出され、かつその価値が認められてはじめてリノベーションと呼ぶことができるのである。そういう意味では、単なる改修までもリノベーションと位置づける昨今の風潮には違和感を抱かざるを得ない。

本来の意味にのっとったリノベーションは、確かに有用だ。しかしそれによって物流業・倉庫業が抱える課題がすべて解決するかというと、その答えは否である。立地に難のある倉庫をオフィスに改修してもテナント集めに苦労するだけだし、仮に集まったとしても賃料は限られるだろう。リノベーションの有用性を最大限に発揮させるためには、その倉庫が抱える課題を多角的に分析し、経営状態や近隣のニーズ、建物の状態まで含めたあらゆる要素を総合的に判断することが必要なのだ。当然ながら、リノベーションしないほうが良いという判断もあり得るのである。

リノベーションはあくまで空き倉庫対策、あるいは収益力強化のための施策の一つとして行われるべきであって、どの倉庫にも有用というわけではない。場合によっては寄託貨物の受け入れ、庫内加工業務の請負や、あるいは現状のまま賃貸した方が効果的なこともあり、リノベーションはそれら採り得べき選択肢の一つに過ぎない。そしてその選択こそが、実は物流不動産ビジネスのキモでもあるのだ。物流不動産ビジネスのスキルを身につけるということは、その選択眼を養うことでもあるのである。

(久保純一)2015.10.05