物流不動産ニュース

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オーナーがやる気のない建物は蘇りません - 139 

先日、ある建築ジャーナリストのトークイベントに参加した。トーク後の懇親会で話をする機会があったので、以前から聞きたいと思っていた質問をぶつけてみた。「リノベーションなどの取り組みをすれば活性化できる可能性のある建物のオーナーが、新しい取り組みに消極的な場合、説得してでも活性化させるべきでしょうか」。少し考えた後にでてきた答えは、「こちらが合わせる必要はないんじゃないかな」。有益と思われるアイデアがあっても、やる気のないオーナーを説得したところでうまくはいかないという。

倉庫や物流施設などの不動産を所有していると、様々な業者が建て替えや改修、各種設備の更新、あるいは売却などを勧めてくる。おそらくそのほとんどは営利目的であって、必ずオーナーの利益につながるという保証はない。数ある勧誘のなかから本当にメリットがあると思われる施策を選び出すのは、専門的な知識やノウハウがあっても簡単なことではない。ましてや不動産や建築の知識のないオーナーにとっては困難といってもいいほどのことなのだ。

冒頭のジャーナリストによると、例えばリノベーションすべきか否かの判断は3ランクにわけて考えるという。Aランクは歴史的にも建築的にも評価が定まっている建物。Bランクは建物の価値はともかく地域のランドマークとして親しまれてきた建物。ここまでは比較的活性化の効果が出しやすいが、問題はCランクだ。これはいわゆる一般的な建物で、判断が最も難しい部分だ。基本的には建て替えや売却という判断になるが、見方や価値観を変えればBランクにもなり得るのである。

もちろん無理にBランクにする必要はない。効果の見込めないリノベーションなどコストがかかるだけで、無駄以外の何物でもない。しかしオーナーの積極的な姿勢なしには、Bランクとしての価値を見出すことができないのも事実だ。やる気があるからといってBランクにはならないが、やる気がなければBランクとしての価値も生まれないのである。ありふれた建物であっても、角度を変えれば意外な価値が潜んでいることもある。まずは自身の倉庫を客観的に見て、その価値を自己判断してみる。そのうえで自分の倉庫を積極的に好きになる。好きなところ、良いところを見つける。これはリノベーションに限らず、倉庫や物流施設の活性化における重要な要素だろう。自分の倉庫が好きではないオーナーが何かをやっても、成功するわけがないのだ。

(久保純一)2016.03.05