人づくりは社会づくり その10「連帯責任」 - 150 
戦場では、一人のミスで部隊が全滅するリスクがある。そんな理由から、自衛隊等で採用されている「連帯責任」。誰かのミス・違反について、全員を罰する制度である。こうする事で、仲間全員に迷惑をかける事が忍びなく、今後ミスを犯さないよう努力を促す、というのが当局の建前であるが、そんな美しい精神ばかりで組織が動いていないことは、子供ならいざ知らず、社会人なら誰もがご存知であろうと拝察する。
自らの責によらず罰せられる。理論的に考えればその不当さは明白であるが、いざ我が身に罰が及んでみると、不思議なもので怒りの矛先は罰した者よりも罰せられた原因である仲間に向かうもので、「罰せられた理不尽」よりも「いかに罰を逃れるか」あるいは「罰を受けた腹いせ」を考えるようになる。
かくしてその常習化によって弱い者同士がいがみ合い、支配者はその優越を確固たるものとする。これは大航海時代以来、欧米列強が数百年にわたって有色人種を支配してきた手法であり、その有効性は歴史が証明している。しかし、それは閉じられた環境において自分が「お山の大将」であり続けるだけの意味しかなく、より広い視野の求められるビジネスに通用するものではない。それでもこうした組織体質が蔓延り続けるのは、自分の地位しか見えない中間管理職の視野の狭さと志の低さに他ならない。
とは言え、そういう人は意外に多いもので、いちいち首をすげ代えていてはキリがない。彼に対しては高い志(事業展望とその中での役割、可能性など)を示し、視野の広がりを促すことである。論語に「小人閑居して不善をなす」とあるように、要は「上官に(部下をいじめる)暇を与えない」ことである。真の敵(語弊はあるが、便宜上こう表現する)は外にいる。内部でいがみ合いながら勝ち抜けるほど、ビジネスの世界は甘くない。それを思い出し、組織改善を実現できた企業こそ頭一つ抜きん出得る可能性を、改めて提唱する次第である。
(フリーライター 角田晶生)2016.06.20