アメリカ物流トレンド見聞 その9「勘違いIoT」 – 167 
先日テレビのニュース番組で、「おやつが飛び出す ペットのしつけも 初めてのIoT体験」「ぬいぐるみがおしゃべり はじめてのIoT体験」というのが放送されていた。おお、どんなIoTだろうと関心を持って観てみたら・・・
あの、よく最近IoTとかって騒がれているが、IoTとは、Internet of Things で、世の中の様々なモノがインターネットに繋がって、これまでにない新しい体験ができるようになる仕組みのことだが、インターネットに繋がっていなくても単にスマホを操作してITっぽいことをIoTと呼んでいないだろうか。
番組でやっていたのは、別室からペットを観察し、スマホをタッチすると、エサやり器からエサがピッピッと飛び出すというもの。これ単なるリモートコントロールじゃないか。次、ぬいぐるみ。これも別室で両親が子供を見守り、親が喋ると、リビングに置いてきたマイク付きぬいぐるみが喋って、さもぬいぐるみが子供に話しかけてコミュニケーションできるというもの。???・・・どの辺がインターネットと繋がっていたのだろうか。
前出のペットの例で言えば、エサやり器がペットの体調、空腹度合、喉の渇き具合を感知して、エサや水が補給され、無くなりかけたら自動でペットフードと水が注文され、具合が悪くなったら飼い主のスマホにアラートが発信される、とかであればIoTと言えるだろう。
みな往々にして新しいワーディングに飛びつきがちだが、特にメディアは正確に使わないと、視聴者に間違った理解をさせてしまう。英語の新しい言葉には定義がはっきりしないものも多いし、ルールメーカーであるアメリカ自身、わざと曖昧にしているケースも多い。だからこそメディアにはより正確な意味合いを伝える努力が必要だし、製品を作っている側も安易な言葉の使用は控えるべきだろう。
言葉の意味はともかく、IoTはうまく活用すれば大きな効果をだす可能性がある。例えば物流業界でIoTを活かすとすれば、従来から存在する輸送中のリアルタイムカーゴトラッキングの進化版だろうか。倉庫であれば、地震や災害が発生したときに建物の損傷場所を特定して、損傷の大きさに応じて最適な修繕部品を自動でネット上から探して自動発注、スマホにアラートがあがり、必要なければスマホ上でキャンセルできる、といった使い方はどうだろう。ここまでできると建物の耐久年数もぐっと上がり、建物の所有者にとって嬉しいかもしれない。倉庫は見えない場所にクラックが入り、そこから雨漏りすることもある。こうしたシステムを構築しておけば、雨漏りの原因が特定できずに困るといったこともなくなるだろう。
IoTを正しく駆使すれば、もっとさまざまな課題に対するソリューションになる可能性があるのだ。スマホでぬいぐるみを操作して喜んでいる場合ではない。
(日本物流不動産株式会社 代表取締役 池田晃一郎)2016.11.05
日本物流不動産株式会社:平成25年設立。倉庫賃貸をはじめ、倉庫や事務所等の商業用不動産の仲介、外国人向け物件紹介サイトの運営が主業。物流業務に役立つ「物流不動産英語塾」や高品質なメイドインジャパンのアジア向けEコマース事業も展開中。